ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #14

スイス本社に赴任。ネスレ期待のマーケター 村岡慎太郎の仕事術

前回の記事:
衝撃的な上司との出会い、出張先での心停止。コーヒー豆のバイヤーがマーケターへ転身した理由
 ネスレ日本で媒体統轄室 マネージャーを務め、2020年1月からスイス本社に赴任している村岡慎太郎氏。映画『カメラを止めるな!』のスピンオフ作品へのスポンサードはじめユニークな仕掛けの背景、スイス本社でのチャレンジについて話を聞きました。
 

積極的に、カンファレンスに登壇する理由


徳力 村岡さんは1月からスイスに転勤になりますが、日本での直近の役割は、どういったものだったのですか。

村岡 
媒体統轄室 マネージャーという肩書きで、オフラインとオンラインの広告のプランニングとレビューを担当していました。

徳力 
ネスレさんは、昔からメディアの種類ごとに分かれた縦割りの組織ではないですよね。個別のメディアを扱うには専門知識が求められることを考えると、すべてのメディアを横串で見るのは大変ではないですか。

村岡 
いえ、あくまでもコンシューマーが軸なので、メディアで分けてしまうと、どのようにコンシューマーがメディアに接触しているのかが分からなくなるんですよ。

村岡 慎太郎
ネスレ日本 媒体統轄室 マネージャー
2003年ネスレ日本入社後、コーヒー豆の買い付けに従事。その後、資材・物品サービスのバイヤーを経て、デジタルの重要性を感じ、2012年よりデジタル開発ユニットにて、新規デジタルメディア開発に従事。2015年1月より媒体統轄室に異動。 ネスカフェ アンバサダー、キットカット、ネスレ通販などの“オンライン・オフライン”のメディアプランを担当。2020年1月スイス本社に赴任。

徳力 
ネスレさんは、そこを徹底しているんですね。ただ、どうしてもすべてのメディアに詳しくなるわけではないから、専門性という意味では弱くなりがちな気がするのですが、そのギャップは、どう埋めるのですか。

村岡 
私の場合は、詳しいメディアの方に直接話を聞くようにしています。特にエキスパートと言われる人に話を聞いているんです。例えば、テレビであれば、広告会社の営業担当ではなく、テレビの窓口担当を紹介してもらっています。「この人、すごい」と思う人がいれば、直接会いに行きます。

徳力 
だから、外部のマーケティングカンファレンスなどの場にも積極的に出ていくわけですよね。

村岡 
その通りです。情報は取りに行かなければ、得られません。セミナーに登壇すると「出たがり」だと揶揄されることもありますが、それがきっかけで新しい話が入ってきたりしますし、名刺交換をした相手に私から話を聞きに行くこともできます。

徳力 
以前から村岡さんに聞いてみたかったのですが、30代でカンファレンスに登壇するかしないかで出会いが変わり、その後のキャリアが変わってくる気がするんですよね。

徳力基彦
アジャイルメディア・ネットワーク アンバサダー/ブロガー ピースオブケイク noteプロデューサー
NTTやIT系コンサルティングファームなどを経て、 2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視する アプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。2009年2月に代表取締役社長に就任し、2014年3月より取締役。2019年6月末で退任、7月から現職。同月 ピースオブケイク noteプロデューサー/ブロガーにも就任。

村岡 
そうですね。カンファレンスに登壇すれば、新しい情報に触れる機会が増えますし、世に言うマーケターの大御所と関わる機会も一気に増えます。昔あるイベントの打ち上げで、エステーの鹿毛康司さん(執行役 エグゼクティブ・クリエイティブディレクター)にしこたま怒られたことがあります(笑)。徳力さんもその場にいらっしゃったと思いますが、それは得がたい経験でした。

徳力 
たしか、吉野家 常務取締役の伊東正明さんもいらっしゃって、すごいメンバーでしたよね。

村岡 
はい、豪華メンバーに萎縮していたら、鹿毛さんから「お前がやっていることは立派なんだから、もっと自分を出せ」と。たぶん鹿毛さんは若いマーケターを育てないと、という意識をお持ちで初対面でしたが怒られました。

徳力 
鹿毛さんからすれば、同じ登壇者なんだから、なぜそんなに自分を卑下するのかということだったのでしょうね。

村岡 
はい、それがきっかけで、私は自分の視点を上げるように意識したんです。要するに、鹿毛さんたち大御所と自分のギャップを見つけて、それを埋めて追い付こうという意識に変えました。そうすると、大御所の発言をさらに深く読み解くことができるようになって、アイデアのレベルが良くなったように感じています。

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