ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #14

スイス本社に赴任。ネスレ期待のマーケター 村岡慎太郎の仕事術

次の一手は、グローバルへの挑戦


徳力 
次は、スイスに赴任されるんですよね。

村岡 
はい。グローバルメディアコーディネーターとして、グローバルエージェンシーや、FacebookやAmazonなどのグローバルメディアとの条件をつくる仕事です。

徳力 
赴任が決まるまでには、どのような経緯があったのですか。

村岡 
スイスにいくつかのポジションが空いていたので、いつかは会社として行かせたいと考えてくれていたようですが、今回は面白そうな内容だったのと、いまの私が成長できるポジションだということで声を掛けてくれたようです。

これまでグローバルな視点で仕事をする機会が少なかったので、その視点を持てるようになりたいと思います。また、日本で培ったことをグローバルでも取り組むつもりです。まずは、1年間の期限付きの出向になるので、その中で一生懸命に取り組みたいですね。



徳力 
日本企業のマーケティングは、欧米に比べると遅れているという印象がありますが、ネスレさんに限っていえば、ネスレ日本の方が進んでいる印象がありますよね。

それこそ社長である高岡浩三さんは、キットカットで新しいフレーバーが許されていなかった中でストロベリー味や抹茶味にチャレンジされたと聞いています。今では世界中の人が日本のお土産として買っていますし、その結果、キットカットの売上がいつの間にか本国のイギリスを抜くという快挙も達成されました。

村岡 
そうですね。本社との面接でも、オンラインとオフラインの予算配分のプランニングやレビューの話をしたら、それをグローバルでもしてほしいと言われました。日本で実施しても、グローバルでは行っていないことは、まだまだあると思っています。

でも、映画『カメラを止めるな!』のスピンオフ作品へのスポンサードなんかは、彼らからしたら、まったく意味が分からないでしょうね(笑)。

徳力 
あれは何と言えばいいんでしょう(笑)。ブランデッドムービーなのですが、ブランドのためのコマーシャルではなくて、『カメラを止めるな!』のスピンオフ作品をつくること自体をスポンサードしている感じですよね。あの施策も村岡さんが企画されたんですよね。

村岡 
はい、その前にティーン向けに「キットカット」の東京ばな奈味の認知を上げたいという課題があって、当時AbemaTVで話題になっていた番組『オオカミちゃんには騙されない』や『今日、好きになりました。』の出演者を起用して、AbemaTV内でCMを配信したんです。

それを店頭のPOPにも活用したところ、ターゲットとのエンゲージが高くて、コンビニの週販がはね上がりました。ターゲットに需要性のあるメディアで、かつ親和性のある人が語れば、結果が出ることが分かったんです。

そこで成功事例がつくれたので、次に「ネスカフェ アンバサダー」と「ネスカフェ バリスタ」の違いが分からない人が多いという課題にアプローチすることにしました。その際に『カメラを止めるな!』が大ヒットしていたので、これをコンテンツの中にうまく組み込めないかと考えたんです。



徳力 
私は最初の放送をライブで見ていましたが、「ネスレさんありがとう」というコメントがあふれていたことが印象的でした。

村岡 
そうなんですよ。あれには、すごく感動しました。番組へのコメントでバリスタとアンバサダーの違いが伝わったかどうかを可視化できました。

徳力 
単純なリーチだけを取ろうと思ったら、安くて楽な方法はいっぱいあります。エンゲージメントを高めることを考えたら、リアルなイベントという選択肢もあるんですが、『カメラを止めるな!』スピンオフ版の場合は、ある意味一度に両方を成立させていますよね。本当に興味深かったです。

こうした日本における挑戦を村岡さんがグローバルで再現されることができるのかどうかに注目しています。もちろん本社のレベルが想像以上に高くて、完膚なきまでに打ちのめされて帰ってくるケースもあるかもしれませんけど(笑)、それはそれできっと大きな学びがありますよね。村岡さんのチャレンジを楽しみにしています。
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