TOP PLAYER INTERVIEW #23
「脱各論? マーケティングに大局観が求められている」足立光、土合朋宏【出版記念対談】
日本マクドナルドのマーケティング本部長として同社のV字回復を牽引し、現在は「ポケモン GO」で知られるナイアンティックで活躍する足立光氏。日本コカ・コーラ、20世紀フォックス ホームエンターテイメントなどを経て、現在は外資系映画会社でマーケティングを統括する土合朋宏氏。
その2人の共著『世界的優良企業の実例に学ぶ「あなたの知らない」マーケティング大原則』が1月20日に発売。それを記念し、常に結果を出し続ける2人から現在のマーケティングやマーケターのキャリアに求められる考え方について話を聞いた。
その2人の共著『世界的優良企業の実例に学ぶ「あなたの知らない」マーケティング大原則』が1月20日に発売。それを記念し、常に結果を出し続ける2人から現在のマーケティングやマーケターのキャリアに求められる考え方について話を聞いた。
出会ってから四半世紀、大学時代の同級生で執筆
――まずは、お二人で書籍を出すことになった経緯からお聞かせください。
足立 土合さんは、私の大学時代の同級生で、竹内弘高先生(ハーバード大学ビジネススクール教授・一橋大学名誉教授)のゼミで一緒にマーケティングを学んでいた仲なんです。
卒業後はお互いに色々な会社にいきましたが、2002年に書籍『マーケティングゲーム−世界的優良企業に学ぶ勝つための原則(エリック・シュルツ著)』、2004年に書籍『ブランディング・ゲーム―個性的なブランドをつくるためのABC(アリシア・ペリー著)』を共訳しています。そんな中で、去年からは仕事でも会う機会が増えて、一緒に本を出そうという話になりました。
足立光
ナイアンティック シニアディレクター
プロダクトマーケティング P&Gジャパン、シュワルツコフ ヘンケル社長·会長、ワールド執行役員などを経て、2015年から日本マクドナルドにて上級執行役員マーケティング本部長としてV字回復をけん引。2018年9月より現職。I-neの社外取締役、ローランド·ベルガーやスマートニュースのアドバイザーも兼任。著書に「圧倒的な成果を生み出す『劇薬』の仕事術」、「世界的優良企業の実例に学ぶ『あなたの知らない』マーケティング大原則」。オンライサロン「無双塾」主催。
ナイアンティック シニアディレクター
プロダクトマーケティング P&Gジャパン、シュワルツコフ ヘンケル社長·会長、ワールド執行役員などを経て、2015年から日本マクドナルドにて上級執行役員マーケティング本部長としてV字回復をけん引。2018年9月より現職。I-neの社外取締役、ローランド·ベルガーやスマートニュースのアドバイザーも兼任。著書に「圧倒的な成果を生み出す『劇薬』の仕事術」、「世界的優良企業の実例に学ぶ『あなたの知らない』マーケティング大原則」。オンライサロン「無双塾」主催。
土合 ある日、突然足立さんから連絡があったんですよ。「『マーケティングゲーム』を今っぽくした本を出そうという話があるんだけど、興味ある?」って。
足立さんはP&G、僕はコカ・コーラ出身なので、同じ消費財とはいえ分野が違うんですよね。実際に一緒に書籍をつくってみたら、強みが重なっているところもあれば、違うところもあって良いバランスになったと思います。
土合朋宏
一橋大学大学院商学研究科卒業。外資系戦略コンサルティングを経て、日本コカ・コーラに入社。16年間マーケティング本部で、世界初のライフスタイルやトレンドの調査部門の立上げ、ファンタ、アクエリアス、爽健美茶など既存ブランドの立て直し、綾鷹などの新製品開発などを指揮。その後20世紀フォックス ホームエンターテイメントに移り、代表取締役社長を務め、2017年より外資系映画配給会社で事実上のCMOとして全部門のマーケティングを統括。新市場創造型商品を研究する日本市場創造研究会の理事を歴任。訳書に『マーケティング・ゲーム』など。
一橋大学大学院商学研究科卒業。外資系戦略コンサルティングを経て、日本コカ・コーラに入社。16年間マーケティング本部で、世界初のライフスタイルやトレンドの調査部門の立上げ、ファンタ、アクエリアス、爽健美茶など既存ブランドの立て直し、綾鷹などの新製品開発などを指揮。その後20世紀フォックス ホームエンターテイメントに移り、代表取締役社長を務め、2017年より外資系映画配給会社で事実上のCMOとして全部門のマーケティングを統括。新市場創造型商品を研究する日本市場創造研究会の理事を歴任。訳書に『マーケティング・ゲーム』など。
――最近のマーケティング関連の書籍は、ひとつのテーマを掲げたもの、あるいはメッセージ性を打ち出したものが多い印象です。その中で、なぜ「マーケティング大原則」という体系的にまとめた書籍を出したのでしょうか。
足立 デジタル化が進んだおかげで、マーケティングが細分化し、いわゆる「マーケター」の数が増えましたよね。さらに、この5年くらいでマーケティング関連のカンファレンスも増えています。ところが、マーケティング全体を俯瞰的に見て、色々な質問に幅広く答えてくれるような本は、少ないなと感じていたんです。
土合 足立さんはこの書籍の中で「大局観」と表現していますが、最近はマーケティングのビッグピクチャーを捉えている本があまりないんですよ。それに、あっても大学のテキストぐらいで、もう少し実務に寄り添ったものがあってもいいなと思っていました。
私は大学生のときに読んだ『新しいマーケティングの実際(佐川幸三郎著)』にすごく影響を受けました。マーケティングの基本が体系的にまとめられ、また花王の洗濯用洗剤「アタック」が誕生するまでの経緯も書かれていて、とても良い本なんです。あの本のようなことを私たちの世代がしておかなければ、という思いもありました。
足立 あと、2002年に共訳した『マーケティングゲーム』はとてもいい名著なのですが、20年近く前に出した本なので内容が古くなっていたんです。それに米国の事例しか載っていなかったので、今の日本のマーケティング現場にいる方の質問に答えられるような本を出したいと考えていました。
――最近の日本では、P&Gはじめ外資系企業のマーケティングが注目されている印象です。お二人とも外資系企業出身ですが、その状況についてはどのように思いますか。
足立 私は日本にもサントリー、小林製薬、資生堂、花王など、マーケティングで学ぶべき企業がたくさんあると思っています。なので、外資系礼賛ということはまったくないですね。
土合 「カップヌードル」の日清食品だって素晴らしいし、アサヒビールの「スーパードライ」のポジションニングやブランディングも秀逸ですよね。ただ、そうは言っても日本企業はマーケティング部門がないところも結構ありますが。
足立 実は、日本にマーケティングという言葉がない時代から、多くの企業は今で言うマーケティング的な考え方をしているんですよ。それこそ松下幸之助もそうです。
マーケティング自体が米国発祥のため、結果的に注目される事例が海外に多いことは否定しませんが、日本で成功した事例を見ることは正しいと思います。今回の書籍でも、小林製薬やサントリーなど日本企業の事例を多く入れています。