TOP PLAYER INTERVIEW #23

「脱各論? マーケティングに大局観が求められている」足立光、土合朋宏【出版記念対談】

アップデートされるマーケティング理論


――現在の環境を踏まえて、書籍ではマーケティング論をアップデートされたということですが、特にどの点が大事だったのでしょうか。

足立 
デジタルとソーシャル、それからCSRですね。現在、マーケティングに携わっている人たちが悩んでいるテーマにできるだけ向き合おうとしています。それから、今まで常識だと思われていた考え方に異を唱えているところもあるので、それはチャレンジでした。

土合 
例えば、マーケティングにおいて最も大切な「コンセプト」についても新しい要素を入れています。通常、大事だと言われている「ターゲット」「消費者便益」「カテゴリー」「差別化」に、新しく「トーン&マナー」を加えました。パッケージやデザイン、コミュニケーション、テレビCMなど、デザイン上の「トーン&マナー」がないと一貫性が保てないんですよ。

あと、クライアントサイドがどのようにメディアを使っていくべきかについても書かれている本は本当に少ないと思います。マスメディアだけではなくて、デジタルも含めてどのように使うべきか、リアリティのある内容にまとめました。
 
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日本のマーケターの課題を踏まえて、大事なこと


――現在、日本のマーケターが抱えている課題を踏まえて、特にここが大事だというポイントはどこでしょうか。

土合 
何かひとつと言われたら、やはり「コンセプトこそマーケティング活動の中心だ」という原則は外せないですね。私はマーケターの採用面接で必ず、「マーケティングにとってもっとも大事なものは何だと思いますか?」と尋ねるようにしています。「コンセプト」だと明言する必要はなくて、似た概念でもいいんですが、答えられる人は半分くらいですね。

足立 
私は、マーケティング戦略の章が大切だと思います。特に、「製品を変えなくても売上は伸ばす方法がある」など、レギュラー品のマーケティングをテーマに書いている本はないと思うんです。新製品のことを一生懸命にやる企業は多いのですが、レギュラー品のことは、あまり考えないんですよね。



――なぜ、そうなっているのでしょうか。

足立 
多くの会社で、マーケティング部門のミッションが新製品の成功なので、レギュラー商品にフォーカスが向いていないのではないでしょうか。    

土合 
たしかに既存製品でも、売り方や見せ方を変えると、新しいマーケットができることは、わかっているようでわかっていないですよね。

それから既存製品は、すでにお客さまがいるわけですよ。そうすると、全く違う切り口やベネフィットを提示すると、そのお客さまが逃げてしまう可能性があるという難しい議論が必ず発生します。そこで、既存のお客さまを守ろうと思いすぎるあまり、中途半端になってしまうんです。
 

3年から5年の間に、深く広く専門性を学び尽くせ


――私たち「アジェンダノート」では、マーケターのキャリアについての記事も多く取り上げています。お二人は今後、マーケターはどのようなキャリアを歩んでいくべきだとお考えでしょうか。

足立 
まずマーケティングのキャリアを開拓していくのに最も重要かつ必須なのは、マーケティングに従事する各自が実績を出し続けることです。マーケターが実績を出せば、マーケティング職の地位も上がりますし、その人のポジションも上がっていきますよね。

それから、いわゆるマーケティングという狭い領域を出て、色々なことに挑戦して幅広い知見を積むことです。私はマーケティング責任者の次のポジションは社長だと考えているので、経営者を目指してほしい。そのためには、幅広い領域の経験が必要です。

土合 
私は少し考えが違っていて、若いうちはある種の専門性を追求した方がいいと思います。専門分野を深くまで掘り下げていくと、他の領域にも応用できるルールがわかってくるんですよね。

そしてある年齢がきたら、ギアチェンジをして広い領域を見ていく必要があると思います。究極のところは、足立さんがおっしゃっていた通り「広いところを見る=経営者になること」だと思います。



足立 
浅く広くではなく、深く広く、ひとつの領域を3年から5年で突き詰めて学び尽くすというイメージですね。キャリアという意味では、目の前のことを一生懸命して実績を出さなければ、次に行けないですから。
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