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売れるモノにはワケがある。PR目線で読み解くヒットの構造 #02

企業にも「人格」がある。TENGAとWiiの事例から考える【ラウツマ 松浦隆】

前回の記事:
あのゴディバのバレンタイン広告が成功した理由を、PR目線で分析してみた

企業の人格を形成するのは、日々の発信活動

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 私は、企業にも“人格”があると思っています。

 そしてその人格が、ファンを掴むための重要なファクターのひとつであると考えます。

 インターネットが普及したおかげで、これまでテレビCMや雑誌の記事広告に限定されていた企業側の発信の場が飛躍的に増え、ほとんどの企業がWebやSNSアカウントを持ち、多種多様なアウトプットをしている時代。その内容の積み重ねが、企業の人格を形成していくのだと思います。また、報道など第三者が発信する内容にも人格は現れ、その対応からも企業の人格が露骨に見えてきます。

 企業の人格とは、企業の理念であり、社会に対する姿勢です。しかし、必ずしもそんな堅苦しいことばかりではなく、まさに“人”のそれと同じで、「おもしろい人(会社)だなぁ」「真面目だけどつまらない人(会社)だなぁ」「謙虚で腰の低い人(会社)だなぁ」といった受け取る側の印象も、企業の人格と言えます。

 今の時代、企業側が「世間はこう受け取るだろう」と期待してアウトプットしたとしても、予想以上に賛否の「否」が盛り上がってボコボコに叩かれることもあれば、逆に何の気なしのSNSのつぶやきが称賛されイメージアップにつながることもあります。

 そこもまた人と同じで、最終的には企業がつくり上げる印象というよりは、「ガチ」というか「素の部分」というか、ウソが通用しないのが人格と言えそうです。

 

新商品PRで示した、TENGAの「バカバカしいチャレンジ精神」

 私がTENGA社に勤めていた時代、新商品が出るたびにプロモーションを考え、「どんなキャンペーンをやろうか」とか「今回はWebではなくリアルイベントにしようか」など、シンプルにお客さま(ファン)のために何ができるか、何をしたら喜んでもらえるか、を常に考えていました。

 当然、商品そのものを広くアピールし、より多くの人に知ってもらい、売上を伸ばすことが最大のミッションです。しかし一方で、長期的な視点で見ると「商品PRに内包されたワクワクとドキドキが、企業の人格を育んでいく」ということも意識していました。

 例えば、日本漫画界の鬼才「まん〇画太郎(まんがたろう)」先生と組んで、「ドクミTシャツ」(※1)という商品を発売したことがあります。その際に思いついたのが、「ドクミTシャツを着て猫ひろしと走ろう!」というリアルイベントでした。
 
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 「ネズミ柄のTシャツを猫が着たら面白いのでは?」という、いたってバカバカしくて単純な発想から生まれた企画です。

 猫と言えば猫ひろし、猫ひろしと言えばマラソン……「よし!初回生産限定で応募ハガキを同梱し、お客さまを抽選でご招待して、猫さんを先頭にファンラン(※2)をしよう!」――思い立ったが吉日、さっそく猫さんに電話(本来はまず事務所に連絡するのがビジネスルールですが、猫さんと知り合いだったため、盛り上がった勢いで直電してしまいました)。猫さんから快諾いただいたことを、今でも鮮明に覚えていますし、感謝でいっぱいです。

 そして快晴の空の下、当選したTENGAファン、猫さんファン、画太郎先生ファン、有志で集まった伴走ランナー、TENGAスタッフ、そして猫さんの総勢30名ほどでファンランが開催されました。

 そこには、数社のメディアも取材に訪れ、数多くの掲載につながりました。また、同じTシャツを着て走る(ある種異様な)集団は、街行く人々に写真を撮られ、SNSを賑わせました。それが参加者のTENGAに対する熱量をさらに高め、予想以上の売上にもつながりました。

 「Tシャツ1枚のためにここまでやるか!?」と呆れてしまいそうなほどバカバカしいチャレンジ精神。それを表現することは、企業の人格を形成していく上で重要なことだったように思います。商品PRながら、単一の商品のファンではなく、ブランドのファンを育むことに貢献したと言えるのではないでしょうか。

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