売れるモノにはワケがある。PR目線で読み解くヒットの構造 #02
企業にも「人格」がある。TENGAとWiiの事例から考える【ラウツマ 松浦隆】
ゲームの立ち位置を変えることで、企業としての新たな人格を表出させたニンテンドー
これまでの新商品PRで印象に残っているのは、ニンテンドー「Wii」です。
特にテレビCMで描かれる、家族でワイワイと遊ぶシーンは印象的であり、イノベーションと圧倒的な差別化、優位性を感じました。
従来、「ゲーム機」と言えば、子を持つ親にとってはいわば“天敵”。「ゲームばかりして勉強しない」「部屋に閉じこもって外に出ない」「食事のときもゲームに夢中で、ご飯をつくる甲斐がない」――こんなふうにネガティブに捉えられていたゲームが一転、Wiiによって「家族のコミュニケーションツール」という善なる存在に転じたわけです。
「集まればWii」というシリーズCMは、「休日編」「親戚編」「職場編」「鍋会編」など、さまざまなシチュエーションでWiiを楽しむ人々が描かれています。今の自動車や家電のCMに多く見られる、“ライフスタイル提案型CM&rdq uo;の先駆けでもあったと思います。
当時、勝手な想像をしたのを覚えています。反抗期の娘(中学2年生くらい)を持つお父さんがこのCMを観て「Wiiを買えば娘も俺と遊んでくれるかな?」と、家電量販店やECでWiiを探し回った健気な人がどれだけいただろうと……。
チャネルとしてはテレビCMという広告ですが、社会における商品の立ち位置を根本から変えようとしたアプローチはPR的と言えます。商品開発のイノベーションと他社との差別化、巧みなPRが一体となり、ニンテンドー復活のカギとなる大ヒット商品が生まれたわけです。
ニンテンドーの新たな人格が色濃く刻まれた瞬間。「これぞ、THEブレイクスルー!」と拍手を送りたいと思います。
(脚注)
※1 月刊コミック@バンチに連載されていた作品『ミトコンペレストロイカ』に登場するネズミのキャラクター「ドクミ」とTENGAがコラボしたTシャツ※2 競争ではなく、文字通り楽しみながら走ること。ファンランニングの略。
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