音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #11

音部さんが語る、文化が違う海外の人たちと一緒に仕事する時のポイント

前回の記事:
あなたはナポレオン? それともモルトケ? マーケターのタイプを習熟度ごとに分類

大事になるのは、チャームと目的のどちらか

 

【質問】

文化が違う海外の人たちと一緒に仕事する時のポイントは何ですか?

 バックグラウンドはもちろん、価値観も文化もまったく違う人たちとチームとして仕事を進めていく上でのポイントですよね。

 私は「チャーム」か「目的」のどちらかが大切だと思います。

 チャームは愛嬌や可愛げであったり「魅力」という意味です。波長が合う相手であれば、チャームを使ってください。人間的に「好きだ」と思ってもらうことで、一緒に仕事がしやすくなるからです。

 そして残念ながらチャームが機能しない場合、どうすればいいか。それは私たちはビジネスをしているので、「何でやっているのか」「何のためにやりたいのか」という考えを大なり小なり持っています。つまり「目的」を共有し合うのです。

 日本人は直接、目的を聞くことを失礼だと思いがちですが、ほとんどの文化では失礼ではありません。なぜなら、それを聞くことは「その人がその目的を達成するために一緒に動きたいし支援したい」という意思表示になるからです。だから「同じチームだから役に立ちたい」と伝えれば、相手も自分がどうしたいかを話してくれるはずでしょう。そうしたら、彼・彼女が示した目的をよりよく実現するために活動し、アドバイスできるかもしれません。

 さらに、もし彼らの目的あるいは考えている資源の限界が分かれば、協働しやすくなります。例えば、相手が時間という資源がすごく貴重と考えているとしたら、「テストなんかしていられない、一歩でも早く動きださないと」という彼らの考えを「リサーチもせずにいい加減なやつだ」と思うのではなく、彼らの論理や戦略に沿って正当に理解できるかもしれません。なので、目的を理解し、ついでに資源も理解しておくといいかなと思います。

 特に外国人と一緒に仕事をする場合は「郷に入って郷に従う」で、みんなが靴を履いているシーンでひとりだけ靴を脱ぐ必要はないのです。ただし同時に、完全に現地化すればいいかと言えば、そうではありません。完全な現地化がいいならば、現地の人を雇えばいいわけです。

 私がダノンにいた時、とても図々しいけどとても頭の良いフランス人の上司がある日、自分の部下のフランス人について、こう言ったんです。

 「お前たちは、何でこんな日本語も喋れないヤツを日本に連れて来たんだと思っているだろう。でもヤツの目を通してでないと、お前たち日本人が自然と無意識にやっていることの違和感に気付けないんだ。だから普通にしていたら自分たちでは気付かないところをヤツに探させろ」

 これは我われが外国人として赴任するときにも必要になる考え方だと思います。中途半端に同化するのではなく、「このスキルは誰も持っていないと思うので、この分野で貢献させてもらいます。だから、何かおかしいと思った点は遠慮せずに指摘するね」と。

 こう最初に言っておけば、みんなが重宝がってくれるのではないでしょうか。
 
音部大輔氏の書籍「マーケティングプロフェッショナルの視点」が好評発売中(詳細・購入はこちら

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録