ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #15

利己から利他へ “87世代”の経営者に聞く行動原理 SHOWROOM 前田裕二

「利他が強い」と確信した理由


徳力 ちなみに周囲の同世代の誰かが利他的な考え方をしていたから、影響を受けたということなんですか。

前田 
実はそうではないんですよね。自分と徹底的に向き合ってみたら、利己を追求する方法論だと幸福度の高まりに限界があると気付いたんです。

徳力 
では、「利他ベースの考え方でビジネスをすればうまくいく」という手応えは、どのように得たのでしょうか。

前田 
これは、走りながらです。自分が世の中に対して提供したい価値を考えたとき、自分は貧困の中でも「頑張ることで報われた」という感覚がすごく強いため、先天的に恵まれなくても後天的に頑張ればなんとかなる、というメッセージを世の中にもっと発信していきたいと思いました。そうすれば、少なからず、救われる人たちがいるかもしれないから。

このような、自分の心の底から湧き出るような思いや、自分の核となるような価値観を“コア”と呼んでいるのですが、このコアをベースに事業をつくり、それを市場に当てはめてカンナ削りしていく作業を繰り返した結果が今のSHOWROOMであり、「ライブ配信×ギフティング」事業でした。



徳力 
当時から「利己」と「利他」という分類で思考されていたのでしょうか。

前田 
利己や利他、という言語化は明確にしていなかったかもしれませんが、「自分(ユーザー)のためなのか、演者のためなのか」というのは分けて考えていて、口癖のようにいつも言っていました。それこそ当初は僕らも車といった豪華なアバターなど利己側の機能を試したこともありましたが、これが伸びなかった。そこで、「自分のための機能」が全然ユーザーに刺さらない理由はなぜだろうと考えました。

徳力 
そこで、どんどん確信に変わっていくんですね。

前田 
そうですね。そこから、演者のためのキャンペーン施策や機能が刺さるというのが数字で見ても、明確になっていきました。

※後編 「広告×深さ」市場の創出には尺度が必要 に続く
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