特別寄稿

コロナウィルスの感染拡大に対して、マーケティングは何ができるか

 

不安が広がる現在、マーケターができること


 昨年12月から中国で感染が始まった新型コロナウィルス(COVID-19)は、2月中旬から本格的に日本社会にも大きな影響を及ぼしました。特に2月26日に政府から発信された「拡散を防ぐ自粛要請」から、3月の音楽やスポーツを含む大きなイベントが延期、中止されることになりました。この時期から感染者は韓国、イタリア、イランへと急速に拡大し、米国にも感染者が見つかり世界に不安が広がっています。

 中国からの日本への観光客が激減したことで、インバウンド向けのツーリズム業界、都市部の商業施設、外食産業はすでに大きな打撃を受けています。自粛要請によって音楽、映画、演劇、テーマパーク、スポーツなどの興行も中止や休止による払い戻し対応などによって、財務的に苦しい状況に立たされています。

 また、日々の生活では学校が休校したため、家庭で子どもの教育や世話をするために働けなくなり、衛生管理では必要なマスクやアルコール消毒液、そしてトイレットペーパーなどの日用品が手に入りづらくなるなどの影響が出ています。

 このような状況に際して、マーケターは何ができるでしょうか。

 もちろんこの状況は今も継続しており、自分たちがどのような業界や立場を代表しているかによって対応の仕方は違うでしょう。そのうえで今、考えられることを自分なりにまとめてみたいと思います。
 

1.    組織の意思統一を図る


 コロナウィルスによる社会の自粛から思い出すのは、2011年3月11日に起きた東日本大震災後の計画停電や経済活動の縮小です。今から思い出すと確かに当時は「自粛ムード」で、大半のテレビCMはACジャパンに差し替えられていました。

 この時期、計画停電による通勤やオフィスでの勤務が非常に困難であったため、いまの勤務状況にも似ているかもしれません。過去を振り返ってみて、このような厳しい状況で大事だったことは、自社の行動規範について意思統一することでした。

 緊急事態に備えてBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画またはBusiness Contingency Planとも呼ばれる)が策定されている会社であれば、そのような事態でどう対処するかのプロトコルができていると思いますが、ない場合でもまず組織的な意思統一を図ることが大事です。

 マーケティングチームも単独で動くのではなく、経営層や社内の他部署との状況のなかで一体となった活動が求められます。場合によっては、社内コミュニケーションの統一をマーケティングチームがリードすることも必要です。
 

2.    「ブランド・パーパス」に基づき、社会に意義を示す


 日本でも休校やリモートワークが政府から要請された際に、すぐに関連する企業がサービスを無料で開放するなど、自社のサービスやモノを提供する活動が活発になりました。

 これは、困難な状況はみな同じなので、企業やブランドの使命として今の緊急事態に陥った社会を助けるには、どうしたらいいかを考えたうえで、短期的な利益を犠牲にしてでも貢献することを選択したからです。このような視点は、結果として社会に対して自社の存在意義を最大化する効果を与えるだけでなく、不安になっている社員に対して「働く誇り」をもたらします。

 これは元P&GのグローバルCMOを務めたジム・ステンゲルが言う、ブランドの高次元の目的「ブランド・パーパス」に適った活動と同じで、組織の意思統一をもたらします。また、この活動そのものは社会に活気を与えるので、結果的に将来、顧客が自社ブランドに戻ってくる可能性を広げます。

 ただし、このような活動は自社の財務的な体力を過信しないことも大事です。そうしないと、自社のビジネス自体が継続できなくなってしまいます。

 

3.    意思決定するタイミングを定める


 上記のようなブランド・パーパスに沿った貢献活動を行う場合も同じですが、経営的な判断に明確な期限を決めることが重要です。特に自粛ムードのような空気に流されると、自粛を始めることは簡単ですが、いつ止めるのかという判断のほうが難しいからです。

 もちろん政府や社会の状況の変化には気を付けるべきですが、「いつまでこの事態に対処し、この時点で次の判断する」とマイルストーンを決めていないと、その時々で判断して行動してしまい疲弊したり、ずるずると様子だけ見て社内の緊張感を維持できなくなります。

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