特別寄稿

コロナウィルスの感染拡大に対して、マーケティングは何ができるか

 

4.    楽観的にならず計画を柔軟に変更する


 ビジネス上の意思決定については、コンサルティング会社のマッキンゼーのレポート「COVID-19: Implications for business(3月9日にアップデートされています)」や、シリコンバレーのVCであるセコイア・キャピタルが起業家向けに発信した記事「Coronavirus: The Black Swan of 2020」が参考になります。

 ここで紹介されているのは、コロナウィルスの影響で事業活動が縮小し、サプライチェーンが混乱し、キャッシュが不足するといった経営上の問題点についてです。

 マーケティング領域では、顧客の維持が困難になり、経費に対する効率が下がることが予想されるため、当初の計画を柔軟に見直すことが推奨されています。あくまでマーケティングは事業活動全体のなかで位置付けられるもので、顧客数が激減している産業では、単なる見直しではなく、事業自体をどう存続させるかにすべてのリソースを投下しなければならない場合もあるかもしれません。

 直接的な影響がすぐに見られない業界でも、楽観的にならずに、大胆に計画を変更することも必要になるでしょう。このような状況では、単に立ち止まるだけでなく、あらゆる状況を想定したシナリオとシミュレーションを繰り返し実行できるようなコミットメントが求められます。その意味では、計画変更でネガティブな面だけに囚われず、現実的な解決策に取り組むことが大事です。
 

5.    「災い転じて福となす」可能性を探る


 マッキンゼーのレポートにもありますが、マーケティングとして最も貢献できるのは「顧客に寄り添うこと」です。これは単に彼らの声を聴くということではなく、このような緊急事態や不便さの中で、顧客の真の欲求やニーズに応えるということです。

 マッキンゼーで例として挙げられているのは、中国企業が感染拡大のなかでオンラインショッピングに力を入れて、自分たちの可能性を制限や自粛の中でも探る努力をしたということです。これは今の強制的なリモートワークが日本人の「働き方改革」を推奨し、違う価値をつくり出すことにも通じる話です。

 成功する企業というのは、このような顧客の行動や意識の変化に伴って、新しい可能性を引き出すサービスや商品を提供する努力を常にしています。その意味で、このような状況を新しい機会に変えられる視点を失わないようにするべきです。
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