ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #17

腕利きマーケター、ディノス・セシール 石川森生氏が語る「キャリアのターニングポイント」

 

ネットが必ずビジネスの要になる判断し、SBIに入社


徳力 石川さんの経歴を拝見すると、大学卒業後はSBIホールディングスに入社し、EC向けのマーケティングソリューションなどを展開するSBIナビ(現ナビプラス)を立ち上げた後、ファッション通販サイト「マガシーク」のマーケティング責任者に就任。

その後は、製菓・パン材料のECサイト「cotta」を運営するTUKURU社長に就任するというECサイトを中心としたキャリアを歩まれていますよね。そして現在は、ディノス・セシールで紙とデジタルを融合したマーケティングを推進しています。

ご自身のキャリアを振り返って、ターニングポイントはどこにあったと思いますか。



石川 それで言うと、最初のSBIナビですね。でも、内定をもらった企業の中では一番条件が悪かったんです。

徳力 
では、なぜSBIを選んだんですか。

石川 
そこは私の叔父の影響が強いかもしれませんね。昔、SBIの北尾さんと叔父が仕事上のお付き合いあったみたいで、叔父に電話で相談したんです。「SBIから内定もらったんだけど、どう?」って。

そしたら「彼(北尾さん)は、仕事ができるから新卒で下に付くのはいい。キャリアを積んでからではなく、いま行け」と言うわけです。

徳力 
すごいですね。当時の石川さんは、インターネットを通じたビジネスがおもしろそうだと思って、SBIを選んだんじゃないんですか。

石川 
はい。そういう意味で言うと、インターネットに個人的な興味はないんですよ。今でも、ですが(笑)。

徳力 
ビジネスの手段として、インターネットを選んだという感じですか。

石川 
そうですね。当時は、インターネットにビジネスとしての可能性は感じていました。新卒のときに内定を3つもらったのですが、SBIホールディングス以外は総合広告会社と、外資系コンサルティング会社でした。

その社員とお話しさせてもらったとき、どこもインターネットに対する認識が非常に甘いなと感じたんです。広告会社の人は「テレビとWEBは繋がるが、この先も中心はテレビ」と思っているし、コンサルティング会社の人は、そもそも戦略の中にインターネットをいかに活用して行くかが明確に定義されていないという時代だったんです。



徳力 
当時は2007年だから、すでにインターネットは普及していましたよね。でもまぁ、たしかにネットバブルが弾けて業界が泥を舐めていたころでもありますね。

石川 
はい、当時は「インターネットは便利だが、世界を変えるほどのものではない」と考えている人の方が多かったように思います。今となれば、その考えに賛同するところもありますが、当時、「これからインターネットを中心に据えて考える必要はない」なんて、あり得ないと思いました。

徳力 
なるほど。インターネットが好きだからではなく、あくまでもビジネスとして冷静に判断したら、この波は絶対に来るから、その方向に賭けようと思ったわけですね。

石川 
そうです。2007年前後は、就職先としてインターネット系の会社を探すと、最初にサイバーエージェントさんが出てきました。私の大学の同期にはインターネット好きが多かったので受けている人も多かったのですが、「インターネット大好き」じゃない私は「なんとなく違うな」と感じていました。

それよりもビジネスとしてインターネットを活用している会社がないかと探したとき、SBIホールディングスに目が行きました。何しろ、証券会社にインターネット取引を持ってきたのは、ある意味で革命じゃないですか。電話の交換台で受け付けていた取引をインターネットで代替すれば、手数料が下がるのは当たり前。これがインターネットの使い方として圧倒的に正しいやり方だと思って、入社することにしました。

徳力 
石川さんがビジネスとしてインターネットに目をつけたのは、なぜだったんでしょうか。

石川 
結局、楽がしたいんですよね(笑)。学生のときも勉強は好きではなかったけれど、要領だけ良くて、いかに短時間で頭を疲れさせずにテストで点を獲るかを考えていました。

そういう意味では、楽ができるポジショニングに対する嗅覚だけはあるのかもしれません。「ここだけ押さえてれば80点取れる」の「ここ」がインターネットだったんです。

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