アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #02
コロナと共にある時代、マーケティングが考慮すべき5つの視点【藤原義昭】
マーケティングの最優先事項は、「安全」の伝達
①安全への配慮
景気の「気」は、空気の気。そして、気分の気とよく言われます。人間は必ずしも合理的に行動するわけではありません。むしろ、その逆の行動をします。それは感情を持つ生き物であるがゆえで、マーケティングはロジックが重要であるものの、相手にするのは生身の人間です。「気」と「感」を大切にすることへの意識が大切です。
そして今後、マーケティングでの最優先事項は「安全」になるでしょう。ウイルスは目に見えないからこそ、大きな恐怖を抱きます。顧客には、企業が安全衛生を実行していることを感じてもらい、この恐怖の感情を落ち着かせてもらうことがスタート地点になります。もしかしたら必要ないことかもしれませんが、それが顧客の身体的な安全ではなく、精神衛生上の安心が提供できるのであれば、企業はそれを取り入れて実行し、安心感を感じてもらう必要があるのです。
次は、実際にあった話です。実は当社グループ会社から、新型コロナウイルスの感染者が出ました。感染源は社屋でないものの、すぐに対外的に公表しました。保健所とも連携をとり、立ち入り調査の際には「施設を消毒すべきか?」という確認を行い、「そこまでの必要はない」という回答を得ましたが、私も含めて経営陣は迷わず、施設を消毒すると判断しました。
保健所からは「必要がない」と言われたにも関わらず実施したのは、お客さま、従業員ともに安心感の「感」を大切にしたかったからに他なりません。
一見、マーケティングとは関係ないと思う方もいるかもしれませんが、マスクなど衛生商品の品切れ、店舗でのレジ待ちのソーシャルディスタンスへの配慮からも分かる通り、顧客の一番の関心事が安全であるのは間違いありません。世界は、急激に「安全」を求めています。
稼ぐことなしに企業を存続させられない反面、最大限の安全対策を行う必要があるのです。今後、顧客に安全を感じさせられない施策はほぼ失敗するでしょう。
その安全の範囲は、顧客だけではなく従業員も含みます。従業員への安全対策なしに就業させている企業に対して、顧客が振り向いてくれるでしょうか。答えは「NO」です。従業員への対応を顧客に知らせることも検討してみてはどうでしょうか。これが結果として、顧客の安心につながり、売上になります。
また、今までは安全衛生に対するコストは、その必要性の高い業種以外で予算化していた企業は少ないでしょう。今後は予算化して管理していく必要があります。
ここで重要なのは、経済活動を止めるという思考停止ではなく、最大限の安全に対する対応を行った上で、ビジネスを進めていくことです。