アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #03

こんな時代だからこそ“HOW”を追求しよう – 渋谷未来デザインの挑戦

前回の記事:
コロナと共にある時代、マーケティングが考慮すべき5つの視点【藤原義昭】
 

苦しい状況をどう良い未来に通じさせるのか


 今年に入って最後に開催したリアルイベントは、2月頭のあるプロジェクトの会合だったが、このときはまさかこの事態がここまで続くとは誰も想像しておらず、4月に開始する予定だった街を使ったエンターテインメント施策に対してテクノロジーとの融合を意識しつつ、当時かなりポジティブな発言をしていた。

 その後、新型コロナウイルスの感染拡大防止ということで、一気に渋谷区内のイベントは全面的に中止・延期、あるいは形を変えての対応が余儀なくされることになった。ここまでは多くの皆さんと同じであろう。

 これで仕事はかなり停滞するのかと懸念したが、実際はまったく逆の方向に動いている。渋谷未来デザインには渋谷区含めて70社近いパートナーがいるが、ここ1カ月くらいは少なくとも1日1件ほどのペースで、新しい相談や案件が入るようになり、びっくりすると同時に有難いことだが、忙しさが倍増している。

 その相談内容はバラバラだが、そこには企業や団体として「自分たちのイベントや活動自体ができなくなった中、何か一緒にできることはないか」、「こんな時期だからこそ社会や渋谷区に貢献できることはないか」「デジタルなどを活用した新しい形の連携を将来のことも踏まえて模索したい」といった想いが共通している。

 一部の企業を除いてだが、マーケティング予算がカットされたり、組織や人員削減をしなくてはならなかったり、ベンチャーに至っては売上に直結しない部門を組織ごとなくす方向になったりといった話も聞く。普段ポジティブなマーケターであっても後ろ向きな発言が増えるし、ビジネスは本当にシビアで、こういう時に企業としての本質をみることになる。

 さて、住民のみならず、働く人、学ぶ人、訪れる人含めて1日の昼夜間人口が国内でも郡を抜く渋谷区のような街においてももちろんのこと、商業施設、飲食店、エンターテインメントやファッション業界などが非常に大きな打撃を受けている。我われの組織が入っている渋谷パルコも、一般のフロアは全て休業中となっている。

 本来4月には、渋谷未来デザインが主幹事の「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」第1弾の取り組みとして、渋谷の街を舞台にNetflixオリジナルアニメシリーズ『攻殻機動隊 SAC_2045』の世界が現実に合成される拡張体験の体験型イベントの実施を予定していた。
 
渋谷5G:攻殻機動隊キャンペーン

 5Gという特性上、デジタルとの連動施策で渋谷の街を回遊してリアルとバーチャルを楽しむ企画から、街の魅力に触れる機会をつくろうとかなり気合いが入っていた。

 しかし、この状況下でリアルイベントは実現できないので、内容を全てオンラインコンテンツ化し、渋谷における体験型イベントは、時期を改めて実施予定する形とした。さすがにビジョンやフラッグを活用した広告展開は変更できず、人のいなくなった渋谷や広告がテレビで映されるのを見て、昨日までの光景がなんだか夢のような感じになる。

 そんな中、この施策においては、渋谷への想いをブレずに、“今後いかなる環境下においても、渋谷における文化創出や新たな価値提供を目指し、オンラインを活用し継続的にプロジェクト活動を推進していくこと”、という宣言を明確に伝えていこうと提案してくれたのもパートナーの方々だった。

 私自身もパートナーの皆さんからモチベートされることが多く、改めて今の苦しい状況をどうやって未来に通じる形にするのかを日々模索している。

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