アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #03
こんな時代だからこそ“HOW”を追求しよう – 渋谷未来デザインの挑戦
“待つ”よりも“進む”ことを選んで動く
さて、日々の問い合わせに対しては、積極的に対応することにしているが、実際に我われの活動も止めずに、以前にも増して積極的にできることを進めようとチームでも意識を統一し、アクションを起こすことにした。
我われのカバー分野は大きく言うと「子育て・教育・生涯学習」、「福祉」、「健康・スポーツ」、「産業振興」、「防災・安全・環境・エネルギー」、「空間とコミュニティデザイン」、「文化・エンターテインメント」といった7分野だが、まず教育、スポーツ、エンタメ、空間、データ活用、情報発信のあり方などから動き始めている。そして、どれも確実にテクノロジーの活用が必須条件となっている。
今できることを、何か一緒にやりたいという企業と共に一つひとつの施策に落とし込み、区役所などに提案するのを繰り返しているうちに、行政とはいくつかの施策で具体化できるようになってきた。こんな時期だからこそ、“待つ”より“進む”選択をすることで渋谷区や渋谷にある企業の力になりたいし、以前にも増して仲間としてどんどん言って欲しいと感じてきている。
3年目となる多様な未来を考える1週間、「Social Innovation Week Shibuya(以下、SIW)」も同様である。
イベント自体がどうなるかよりも、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を踏まえ、今年は新しい都市型イベントのあり方を渋谷区、参加企業・団体、賛同者、そして一般の参加者の方々と意見交換しながら、一緒に革新していくために、あえて昨年よりも早く開催の発表をした。
今だからこそ、考えることを止めるのではなく、どのようにすれば心に刻める価値を渋谷から発信できるのか、チームとして挑みたいと思ったからだ。ここには渋谷区側も賛同してくれて、今年も共催事業として今から進めることに同意してくれた。
もうひとつ取り組みを紹介すると、学校の臨時休校において、渋谷区立小・中学校の児童・生徒の学習を一層推進するため、教育ICT体制の強みを発揮する時ということで、渋谷区教育委員会とタッグを組み、学習動画「渋谷オンライン・スタディ」の企画・監修を行い、5月2日から配信をスタートした。1週間という短期間で各社と準備し、なんとかゴールデンウィークに間に合った。渋谷区は、区立小・中学校の全児童・生徒と教職員にタブレット端末各1台を配付しており、このオンライン・スタディは実際の授業コンテンツを動画化し、順次配信する。
それ以外にも行政との連動案件が進んでいると伝えたが、我われの意義である渋谷区や都市の未来につながる事業を多様な主体と一緒にやっていくことがリアルに体現されつつある。まさしく組織がハブとなって企業をつなぎ、オープンイノベーションを起こすことを、この緊急事態のなか進めている次第である。
さて、人によっては生き方や働き方を改めて見直すことができているというポジティブな部分もありながら、やはりコロナによる経済のダメージは計り知れない。あれだけアクティブな街である渋谷から今の現実を見れば見るほど、本当に悲しい気持ちになるし、観光、商店街、エンタメ施設など心配の種は尽きない。緊急事態が解けたとしても、今までとまったく同じ価値観や意識は戻ってこないだろう。
しかしながら、これだけ自宅にこもっていたら、この事態が収束した際には、リアルな場所や体験の貴重性が見直されると同時に、常にデジタルを含めた別の形での拡張体験や新しい手法が必ず追加されてくると思う。
震災後、人の暮らし方や産業のあり方が大きく変化し(一部余儀なく変化せざるを得ない人がいたように)、しかしながら生きることへの喜びを感じて前に進んでいったように、まずは今できることを前向きにやりつつも、どれだけ将来を見据えた手法を実験して推し進められるかが大事である。