アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #04
コロナ流行を経験した企業と個人は、どんなポートフォリオを組むべきか【足立光】
活況の広告市場で何を打ち出すべきか?
「3つの方法」のうちの2つ目「いろいろな施策を考える時の判断基準」の、特に広告について補足したいと思います。
「なぜ広告か」と言うと、いま、コロナの影響でみんなが自宅から出なくなったことで、テレビやインターネットを見る時間が長くなったことが理由だと思いますが、広告の効果がかつてないほど高くなっているからです。これはマスとデジタルの両方に言えること。
3月はテレビのHUT(総世帯視聴数)やPUT(総個人視聴率)が、特にM1やM2層で前年2~5割ほど上昇しています。それだけ、テレビの視聴者が増えているわけです。しかも上がっているのはゴールデンタイムだけでなく(比較的安価な)朝や昼帯の数字も上昇しています。
デジタルでもSNSやYouTubeなどのスコアは軒並み2~7割上昇しています。この状態がいつまで続くかわかりませんが、間違いなくいまは、同じ金額で、より多くの人に情報が届くという意味で、広告を打つ絶好の機会なのです。
ただ、広告の効率(リーチ)が上がっている一方で、「この自粛のタイミングで、何を打ち出せばいいんだ?」と迷う方もいらっしゃると思います。実際、それだけ広告が見られているにも関わらず、あまり話題になっている(心に刺さっている)広告が少ない、という事実(というか、私の私見)もあります。
「何を打ち出すべきか」に関しては、すでに徳力さんが「エステー『空気を変えるぞ』CMに学ぶ、企業の『広告』ができること」というステキな(私も100%同意する)記事を書かれているので、詳細はそちらに譲りますが、結論から言うと「勇気や笑い」をくれる広告が必要なのではないかということです。
「話題になる」というのは、「心に刺さって、かつ他の誰かに共有したくなる」ことです。これだけ暗いニュースがメディアを覆い尽くしている現在、数少ない「勇気や笑い」をくれるトピックを、他の誰かにも共有したくなるのは、考えてみれば極めて自然なのかもしれません。
実際、4月17日に公開された関西電気保安協会の広告が話題になっています。私のところにも、「これ面白いから見てみて!」というメールが何通来たことか。
人の距離の近さやオフィスの様子、居酒屋でのやり取りなど、明らかに「コロナ前」の姿や行動を描いているのに、あまり批判されることなく拡散されているのは、やはりこのキャンペーンが「(勇気と)笑い」をくれるからだと感じました。ちなみに私は、エピソード2と10がツボでした(笑)。
多摩美術大学の佐藤教授が紹介している、「コロナ危機で生まれた新しい日常」で紹介されている事例の多くも、ポカリスエットを筆頭に「笑いと勇気」をもらえる広告が多いですね。
ちなみに、そんなに「広告の効率が良いなら、過去に撮った広告を流せばいいのでは?」というご意見もあると思いますが、その広告が現在の空気の中で「感情に刺さる」広告だと判断するのであれば、流すのはアリだと思います。
ただ、すでに広告が溢れている中で、しかも世間の興味がコロナ一辺倒な中で、「感情に(ポジティブに)刺さる」ような尖った「ありもの」広告は、なかなかないのが現実なのではないでしょうか。
たびたび繰り返していますが、「感情に刺さらない広告は、流すだけ金の無駄」ですから…。(詳細は拙著『世界的優良企業の実例に学ぶ 「あなたの知らない」マーケティング大原則 」11章をご覧ください)。