アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #04

コロナ流行を経験した企業と個人は、どんなポートフォリオを組むべきか【足立光】

 

コロナ後は「副業をする会社員」が最強の働き方?


 「3つの方法」のうち最後となる3つ目は、「仕事をしているすべての人は、自分自身のマーケティング(キャリア)について見直そう」です。このポイントについて補足したいと思います。

 今後、企業の副業解禁がさらに進むと考えられます。その理由は、その方が個人にも企業にもメリットが多いからです。

 まず個人にとってですが、ある会社の仕事「だけ」をしていた場合、覚える経験や知見はその仕事関連のことのみ、会う人もその仕事関連の方のみになります。副業をしていれば、それが飲食店のバイトなどではなく、ホワイトカラー的な仕事であれば、会社の仕事とは別の経験や出会いが増えていきます。



 自分もいま、正社員として働く会社とは別に複数のまったく違う業界の仕事をしていますが、自分の知らないことや、いまの会社だけで仕事をしていたら出会えないような人に、毎週のように出会います。

 加えて、今回のような緊急自体の場合、ある会社だけに収入を頼っていると、もしその会社が危機に陥った場合、または休業してしまい休業手当(収入の6割)しか支給されないようになったら、途端に収入が激減してしまいます。東洋経済オンラインのインタビューでも話しましたが、収入こそ「ポートフォリオ化」が必要だと思います。

 ちなみに企業にとっても副業解禁はリスクの軽減になります。特に実店舗を抱えるような企業の場合、今回のような緊急事態では、店舗は営業できなくても、従業員に給与を支払い続けなくてはなりません。もちろん、休業手当として、それまでの6割程度しか支払わない会社もあるかもしれませんが、それでも数が多ければ相当な負担です。

 もしその会社が副業を禁止していたら、従業員はその6割ほどの給与で生活していかなくてはなりません。しかし、もしその会社が副業を許可していれば、従業員は他の仕事をして収入を得ることも可能になります。企業が副業を解禁することで、従業員の生活を100%抱える、というリスクが軽減するのです。

 それでは、複数の違う仕事をできるフリー(独立)がいいかというと、必ずしもそういうわけでもありません。今回の危機で「何があっても当面の給与だけは(もしかして6割かもしれませんが)支給されるサラリーマン(会社員)」というステータスがいかに守られていて安全か、よくわかったと思います。

 これがフリーの場合、仕事の場がなくなってしまったら、収入はゼロになります。今回も、いわゆるイベントやセミナー関連の仕事が消滅してしまい、自分の周りにいる教育コンサルなどをやっている方々が結構な苦戦をしています。

 また、もし自分が大怪我をしたり病気になるなどして数週間~数カ月の入院を余儀なくされたら、サラリーマンはある程度の補償がありますが、フリーであれば、間違いなくその間の収入はなくなります。

 加えて、サラリーマンであることは、社会的にも守られています。たとえば、フリーになったら、住宅ローンやクレジットカードを契約するのが、サラリーマンよりも格段に難しくなります。会社の仕事以外に多くの仕事をしている有名な編集者の箕輪厚介さんも、著書『死ぬこと以外かすり傷』の中で、メリットが多いのでサラリーマン(現在は、幻冬舎勤務)は辞めない、と明言しています。

 これは「フリーという働き方」を否定するものではありません。なにしろ独立は「自由」を手に入れることなので、それはとてもとても羨ましく思います。ただし、自由と引き換えに大きなリスクもある、ということなのです。
 
123RF

 こういった状況を考えると、今後ある程度安定した生活をしながら、自分の経験や出会いを増やし、加えて収入をポートフォリオ化しようとすると、間違いなく「副業ができる会社で、正社員として働きながらガンガン(ホワイトカラー的な)副業をする」という働き方がベストなのでは、と思います。

 もちろん、こうした働き方をすると“超”忙しくなります。自分にとって平日の夜や週末は、休むための時間ではなく、完全に仕事の時間です。仕事自体を楽しむというメンタリティがなければ、この生活は続きません。しかし、これが自分の経験や出会いを最大化し、収入もポートフォリオ化できる手段だと考えています。

 拙著『劇薬の仕事術』にも書きましたが、「人と違うことをする」ことが自分自身の差別化になります。今回の緊急事態や自宅勤務で時間ができたという方は、周りに流されてZoom飲み会をやったり、Netflixを見たりするのではなく、別の仕事をする、またはその準備をしてみてはどうでしょうか。
 
『劇薬の仕事術』

 ビジネスやスキルのマッチングサイトである「ココナラ」や「ストアカ」、「ビザスク」などに登録して、自分が現状どのような価値を提供できるのかを把握することもできます。そうすることが、自分の経験や知見や出会いを増やすことにつながるだけでなく、また緊急事態が来たときのリスク管理にもなるはずです。事業のみならず、個人もどんなポートフォリオを組むべきか、考えることがとても大切な時代が来たのです。
 
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 ※本記事は、足立光さんのブログ「足立光の負けない日本人」の記事を再編集したものです。
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