アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #06
ウィズ・アフターコロナの消費者欲求は、失われた五感の回復【大松孝弘】
With/Afterコロナに企業が注視すべき消費者の20の新・欲求
分析の結果、Withコロナの消費者欲求が8つ、Afterコロナにも続くと考えられる12の消費者欲求が明らかになりました。
私たちは、これら20の新・欲求を体系化し、「ニューノーマル・プラネット」と名づけました。恒星を取り巻く20の惑星が、ニューノーマル(新常態)における消費者の新・欲求をあらわします。
20に体系化された共感と非共感の消費者インサイトは、次の情報で構成されています。
- 消費キーワード:ニューノーマルにおけるビジネス(マーケティング)機会
- 共感スイッチ:企業が応えるべき消費者の欲求
- 非共感ポイント:企業が感じさせてはいけないこと
- 代表する消費者事象(n=1)とイメージビジュアル:この消費キーワードを象徴する具体的な消費者の行動
- Beforeコロナの価値:変化を理解するための従前の価値
- WithコロナまたはWith/Afterコロナの価値:ニューノーマルにおいて着目すべき価値
その内容の一部を紹介します。
消費者欲求:失われた五感 回復消費
<共感スイッチ>
デリバリーやオンラインでは得られない、五感が豊かな体験を楽しみたい
<代表する消費者事象(n=1)>
好きな物を好きなだけ食べることができるケーキバイキングに行けなくなったので、自分で週末ごとにホールケーキをつくり、その甘い匂いに包まれて幸せを感じている。家事や子育てで忙しく、ゆっくり食事もできない日常のストレスを、これまではバイキングでたくさん食べることで発散していた。
<非共感ポイント>
ライブ感やシズルなどの五感が乏しい
<Beforeコロナの価値>
リッチな五感を当たり前のものとして普通に受け容れる
<WithコロナまたはWith/Afterコロナの価値>
抑えられてきたリッチな五感をより強く求める
この「失われた五感回復」欲求を満たすアプローチで実施されている、国内外のキャンペーン事例を紹介します。
セレクトショップのビームスは、3月下旬に自社サイト内で初めてライブコマースによる紳士服の販売を行いました。ライブ配信アプリのサービスを導入し、店頭での接客ができない状況を解決しています。これまでのネット通販とは違って、話をじっくり聞いているうちに欲しくなる、といった顧客の声もあります。6136人が視聴し、1時間で100万円弱が売れたという実績も報告されており、五感をフルに活用した店頭接客に近づけようというアプローチです(『日経MJ』2020年4月21日)。
その他にも、中国の大手レストランチェーンが、休業期間を利用して新たな半調理品の商品を開発し、自宅で食事をする人が増えたことに対応しようとするなど(『ハーバードビジネスレビュー』2020年3月27日)、完全な五感回復は無理でも、一歩踏みこんで消費者が自社のプロダクトやサービスの感覚を体感できるように近づける試みといえるでしょう。
私たちが今回発表したものは、「New Normal Planet1.0」と呼ぶべきもので、大量の定性情報に基づいて作成された仮説です。この仮説がどの程度一般性があるか、どの程度市場全体に及ぼす影響が大きなものなのか、その計量的な検証についてはすでに実査済みで、現在、集計分析を行っているところです。定量調査の結果を踏まえた分析は、5月下旬に発表する予定です。
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