アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #07

コロナ禍で大学は、“最高の映像コンテンツ”をつくる機関に進化する【近畿大学 世耕石弘氏】

 

「Webを使ったら負けだ」という心の壁が一気に崩れる


 コロナ禍で、全てがWeb中心の世界に変わっていくでしょう。

 我われの主力商品である授業も、今は何となく対面の方のクオリティが高いと思われていますが、実は若手のWebを使いこなしている先生は「Webの方がいい」と言っています。

 例えば、日本人は授業中に一番後ろの席から手を挙げて質問するのが苦手ですが、チャットであれば、気軽に質問できます。大学にはティーチングアシスタントという授業を手助けする大学院生がいて、今までは資料制作やレポートのチェックをするぐらいでしたが、今後はその人たちが講義中に学生からチャットで来た質問に、リアルタイムにばんばん返していくことが可能です。しかも動画はアーカイブできるため、復習にも使えます。

 地方の大学もWebを使えば、「今日は東京の有名企業の社長さんに講義をしてもらいます」として1時間ほど話してもらって、残り時間をその内容についてディスカッションという濃い授業も可能になります。

 近畿大学は、この流れに乗って「大学だからこそ、最高の映像コンテンツをつくるんだ!」という時代に突き進んでいきたいと思います。そうなれば、大学に対する価値観も変わるでしょう。

 そして、これは大学に限った話ではなく、小学校、中学校、高校も同様です。

 進捗の遅い生徒にはこのコンテンツ、早い子にはこのコンテンツと生徒の習熟度にあった動画を紹介して、分からない子には手を挙げてもらって先生が教えるという授業ができます。従来は、習熟度の早い子はもの足りないし、遅い子はついていけないという状況がありましたが、それがまたたく間に解消される世界が到来するのです。
 
近畿大学のオウンドメディア 「Kindai Picks」では、オンライン授業について先生に率直な気持ちを聞く記事も掲載している。

 今まで、こうした変化に抵抗していたのが、教育に強い情熱を持っている教員でした。機能的には実現できても、「Webを使ったら負けだ」という心の壁があったのです。しかし、それがコロナ禍で一気に崩れました。

 どんな大学や企業にも、その道のプロがいるはずです。そうした人たちを活用して、まずはWebで世の中に役に立つコンテンツを発信してはどうでしょうか。その結果、自分たちの顧客だけではなく、世の中に大きな影響が与えられ、さらには評価にもつながるように思うのです。
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