アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #特別編

「志村けんのだいじょうぶだぁ」YouTube公開は、どう実現したのか

 2020年3月29日、タレントの志村けんさんが新型コロナウイルスによる肺炎のため亡くなった。その翌月、志村さんが所属していた芸能プロダクションのイザワオフィスが、志村さん出演のテレビ番組の再編集動画を公式YouTubeチャンネルにて公開。収益を日本赤十字社に寄付する意向を示した。

この企画が実現した背景には、YouTube上で違法動画のアップロードが急増する中で、著作権者に適切に収益が配分するという取り組みがある。テレビとYouTubeをはじめデジタルコンテンツの融合が進む今、どのようなコンテンツマネジメントが求められるのか。イザワオフィスの取り組みから考える。
<取材協力:ALPHABOAT(アルファボート)>
 

公式YouTube動画は、1カ月で565万回再生に


 2020年3月29日、お笑いやテレビのバラエティ番組などで活躍したタレントの志村けんさんが、新型コロナウイルスによる肺炎のため亡くなった。国内で著名な芸能人の新型コロナウイルスによる死亡例が初めてだったことも然ることながら、亡くなる直前までテレビで元気な姿が見られていただけに、多くの人から「信じられない」「やりきれない」といった声があがるなど、日本中に大きなショックが広がった。

 翌月の4月18日、志村さんが生前所属していた芸能事務所のイザワオフィスが、同事務所の公式YouTubeチャンネルで、1987~1996年にテレビで放送された「志村けんのだいじょうぶだぁ」を再編集した動画を全10本公開すると発表。2~10本目には広告を付け、そこから得られる収益のうち必要最低限の経費を除いた全額を日本赤十字社に寄付する意向を示し、大きな話題となった。
 
イザワオフィス公式YouTubeチャンネル

 動画は発表当日から5月16日にかけて順次公開され、1本目の再生回数は公開翌日の午後11時の段階で300万回を突破。丸1カ月が経った5月18日時点で、565万回にのぼっている。
 
【公式】志村けんのだいじょうぶだぁ #1

 動画を見た視聴者からは、「泣きながら笑った」「志村が死んだ悲しみを志村が癒してくれる。すごいね」「笑って寄付になるのは凄いな」といったコメントのほか、中国語や英語のコメントも寄せられた。
 

イザワオフィスが公式動画を公開した背景


 「志村けんのだいじょうぶだぁ」には、覚せい剤取締法違反で逮捕されたタレントの田代まさしさんがレギュラーとして出演している。また、番組内のコントの一部が、現在のテレビ放送におけるコンプライアンスには適さないという声も出ていた。そのため各テレビ局は志村さんの訃報を受け、追悼番組の放送や志村さんが出演していた番組のアンコール放送を行ったが、同番組は視聴者への配慮から、テレビでの放送はあまり行われなかった。



 イザワオフィスは発表で、「今後についても、(テレビなどで目にしていただく機会は)残念ながら限りなくゼロに近い状況です。弊社スタッフ一同、これら、志村けんの全盛期とも言える時期の作品が、このまま人々の目に触れられず、再び世に出ないまま葬り去られてしまうことに対して、大きな葛藤がありました」と、動画公開の理由を述べている。

 一方で、YouTube上で一般ユーザーが志村さんの「公式」をかたり、動画を違法掲載する例が急激に増加。広告を付けている動画も多く、著作権を持たないユーザーが不当に収益を得ている状況だった。

 動画コンテンツの制作やYouTubeの運用代行などを行うALPHABOATは、この状況を目にした4月1日、イザワオフィスに連絡。ALPHABOATの著作権保護サービスを使って、本来の著作権の保有者や志村さんの遺族にコンテンツの収益が入るようサポートしたいと申し出た。

 連絡を受けたイザワオフィスは、志村さんが出演しているコンテンツを、公式YouTubeチャンネルで期間を限定して配信と併せて違法転載動画のブロックをすることを決定。外出自粛中に志村さんの過去のコンテンツを楽しんでもらうことで、医療従事者への支援にもつながる形をとった。

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