アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #特別編

「志村けんのだいじょうぶだぁ」YouTube公開は、どう実現したのか

 

約3週間で、2万件以上の違法動画を排除


 ALPHABOATはイザワオフィスの決定を受け、YouTubeにアップロードされた違法動画をブロックする取り組みを開始。同社が保有するCMS(コンテンツマネジメントシステム)を使い、オフィシャルの動画と比較して映像や音声が一致するものや、発見した違法アップロード動画とそれに類似する動画を自動で検出したほか、志村さんに関するキーワードを手動で検索して見つけていった。

 見つけた違法動画の中でも、公式をかたったり、広告を付けたりするなど悪質な動画をアップロードしたユーザーにYouTubeを通じて直接メールを送り、警告。この取り組みは4月20日からスタートし、5月11日時点で数万件をブロックした。また、これら削除された動画の再生回数を合わせると、数億回にも及んだという。

 違法動画をあまりに速いスピードで排除していったため、ある一定数はクレームが来ることを予想していたが、ALPHABOATの吉田茂雄氏は「まだアルファボートには1件もクレームが入ってきていない」と語った。

 一方では、公式がきちんと見られるコンテンツをアップしたことに対して、Twitterなどでイザワオフィスに感謝を伝える投稿が見られた。ほかにも、「田代まさしがカットされるなら一般ユーザーの投稿の方がいいと思ったけど、カットされてないのか、よかった」など、田代さんの出演部分を地上波放送当時のまま見られること喜んでいる内容も多くあった。
 
根強いファンを持つことがわかった「志村けんのだいじょうぶだぁ」
 

今後の「コンテンツマネジメント」の在り方とは


 少し前まで、テレビに出演するタレントとYouTuberなどのデジタルクリエイターはそれぞれの領域に分かれていたが、最近はデジタルクリエイターがテレビに出演したり、タレントがYouTubeを始めたりと、テレビとデジタルの融合が進んでいる。

 コロナウイルスによる外出自粛がそれを一気に加速させ、もはやその堺はなくなっているが、それぞれの成り立ちや感覚の違いから、著作権を含めたルールや作法に齟齬が生じている。

 この状況に対してALPHABOATの西谷大蔵氏は、テレビもデジタルも含めた複合的なコンテンツのプロデュースを行う企業として、「トラディショナルなテレビや映画などの著作権者のお気持ちと、デジタルクリエイターの新しい活躍の場をどちらもサポートしながら、視聴者に対してきちんとしたエンターテイメントをお届けしていきたい」と展望を語る。

 同社がイザワオフィスに対して著作権保護サービスの提供を申し出た4月1日から、実際に対策に乗り出すまでは3週間弱。スピード感をもって進められたのは、「目線を広く、社会のエンターテイメント全体をずっとくまなく見ているから」と西谷氏。

 今後、ますます旧来コンテンツとデジタルコンテンツの境界がなくなっていくなかで、その両方の感覚をうまくマッチングしながら、誰もが気持ちよくコンテンツを利用するための最適解を見つけていく必要があるのかもしれない。
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