アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #08

リモートワーク中心の時代が到来しても、生き残れるマーケターの条件【今西 陽介】

 

雑談を通じ、積極的なセレンディピティが必要なわけ


 「成果、成果」というと、頭痛がする人もいると思うので、少し柔らかい話もしながら、原稿を締められればと思っています。最近、周りからよく聞かれるのは、

 「オンラインミーティング中心で、仕事中の雑談が減った」
「雑談から生まれる、カジュアルな仕事がしにくくなった」

 という話です。ソーシャルディスタンスと言われる物理的な距離に伴い、心の距離まで遠くなった気がするのです。これは私も感じていることですが、仕事における雑談が減少する原因としては、次の3つを考えています。
 
  1. そもそもオンラインミーティングに慣れていない
  2. 相手の情報が入手しにくくなったから
  3. リモートワークの状況下で成果と時間を意識したミーティングになるから

 1は徐々に解消されると思います。3はまさに、これまで話してきた意識の話ですので、ここでは残った2にフォーカスを当てて話します。

 オンラインミーティングは、画面からの情報がすべてで、五感で感じられないのが難点です。特に初対面は難易度が高く、オンラインミーティング画面に資料を投影するだけでは、相手の息づかいや細かな表情を感じにくく、得られる情報が限られます。職場だと、隣りの席の人がお菓子を食べていれば、その情報だけで雑談も生まれ、そこから複数人との会話に広がりますが、現状では難しいですよね。

 そこで、この状況下では、意識的に、自分からテキストコミュニケーションを増やして、いつも以上に自己開示が重要で、自らさまざまな情報を提供すること、また相手の小さな変化を見逃さない気づかい力が求められると思います。

 特にリーダーは自分のメンバーに対して、離れていても相談しやすい雰囲気を今まで以上に意識することが大事です。何かしら毎日メッセージを発信するでも良いですし、オンラインミーティングで集まっている姿を写真に撮ってチャットグループに送るのも有効でしょう。いずれにしろリーダーから距離を近づけるというのはリモートワークでは必須です。オンラインだとチーミングがやりづらいと言っていたら、リーダーとしては失格です。リーダーはいかなる状況下でも成果を出すチームをつくるのが基本です。



  一方で、オンラインで効率化が追求されすぎると、セレンディピティが減ってきているのも課題です。雑談から生まれるセレンディピティを改めて意識できると良いかもしれません。ちょっとしたことを話したいときには、5分だけオンラインミーティングをする、ひと昔前の電話で要件を伝えるみたいな方法で、効率化しすぎないコミュニケーションを工夫するのも大切かもしれません。

 ひとつ知っておくと良さそうなことは、人間の根底には、「人から頼られるのが好き」という気持ちがあることです。ちょっとした相談をメンバーからリーダー、またリーダーからメンバーにも、オンラインだからこそ意識的にすべきです。

 コロナ禍では、成果をわかりやすく出すという心がけに加えて、雑談をする余裕も持って、変化が求められる世の中を乗り越えていきましょう。
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