RYUKYU note #02

沖縄の天ぷらは、おやつ。ファミマと提携で注目「上間てんぷら」の成長物語

 

負債2億円のスタート。9年間で年間売上6億円へ


――上間さんは、お父さんから事業継承した際に、そもそも2億円の負債があったと聞きました。そこから、どのように事業を成長させたのでしょうか。

 2009年頃、私が継いだ当初はキャッシュフローが悪化し、初めの1~2年は資金繰りに奔走していました。負債2億円の内訳は1億2000万円が製造工場への投資で、残りの8000万円はその投資に伴って税務調査が入った結果の追徴課税です。だから、固定費の重たい固定資産と、何の資産にもなっていない8000万円の負債があったわけで、正直「たいへんな状況で引き継いだな」と思いました。



 まず半年ほどかけて財務の流れを整えて、自社の今後について役員と戦略を練り上げていきました。その中で出てきたのは、1億2000万円の設備は諸刃の剣だということ。コストセンターである反面、高い生産能力を市場にフィットさせれば、大きく成長できると考えました。

 ただ、初めは投資できるキャッシュフローが全然なかったので、まずは今ある商品を違うマーケットに売ろうと考えました。加えて、競合が少ないところを探してたどり着いたのが、沖縄の法事などの仕出しマーケット。そこは大手のプレイヤーが少なく、スーパーも廃棄ロスや発注ミスを恐れて、量をさばいていないことが分かったんです。

 そこで初めは、徹底的に冠婚葬祭事業者への営業活動や、消費者へのポスティングを行いました。通常の店頭販売の客単価が600円程度ですが、法事などの仕出しは親戚が集まるため、1件5~8万円と単価が一気に上がります。

 さらに、個人のお客さんが天ぷらを購入してくれた際に、袋の中に法事・行事用のてんぷらカタログを入れて、「上間天ぷらならおいしいから、今度の法事はここで頼もう」と思ってもらうことを狙いました。そうやって、だんだんとお店のフロントは天ぷらやお弁当など、バックエンドは高単価の仕出しというビジネスモデルを構築していきました。
 

法人が伸び悩み、店舗拡大を決意


――そのビジネスモデルが確立したのは、いつごろですか。

 手ごたえを感じたのは、事業継承から3年目くらいです。当時、店舗は1店だけでしたが、売上が前年比30%に増加しました。もともと1日30~40万円ほどの売上があったのですが、そこに仕出し注文の売上が入ってきたことで月間500万円、年間で6000万円くらいに伸びたんです。
 
上間弁当天ぷら店

 そのあたりから、仕出しの配達も始めました。単価が5万円や10万円なら十分にコストが合うんです。県内全域をカバーするべく店舗数は増やさずに、ポスティングだけで売上を拡大していきました。

 そこからは、チラシを見た冠婚葬祭事業者から問い合わせが来て、法人取引を増やしました。それがある一定のラインに到達したときに売上が伸び悩んだため、そこで初めて店舗を増やす戦略に切り替えました。

――個人向け販売を増やせば、法人向け販売も増えるという狙いですか。

 その通りです。配達はリアル店舗がない分、コストが軽いのですが、認知や購買パターンの確立がなかなか難しいんです。試しに、うるま市に小さな店舗を出店してみたところ、そのエリアからの配達注文が50%以上増えました。

 やはり、リアル店舗は顧客の信頼獲得に効果があると分かり、そこから小型の店舗をたくさん出す方針に切り替えました。現在は県内に5店舗展開しています。店頭での直接販売と仕出し販売の比率は6対4ですが、仕出しは利益率が高いので稼ぎ頭になっています。

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