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過去の広告事例から、何が学べるのか【ライトパブリシティ 杉山恒太郎、電通 藤本宗将 対談・後編】

歴史を知っているからこそ、過去を乗り越えられる

藤本 僕の若い頃は机で過去の広告の年鑑をずっと見ていました。過去の広告を"写経"する勉強法もありました。そうやって過去の広告を勉強しないと、打ち合わせの時に「あれがね」とか「ああいう感じの」と言われるので仕事にならないんです。

 それに、過去にはないものをつくりたいという気持ちもあります。大発見なんてそうそう起こるものではないけど、何かつくるからには小さくても発見や発明はあるべきだと僕は思っています。本心を言えば、自分も一生に一回くらいはすごいものを発明したいんですけどね(笑)。

 それには過去のことを知っていないと話になりません。自分で発見したと思っても、たいていのことはとっくの昔に誰かがやっているわけですから。



杉山 新しいものをどんどん吸収して理解することは、ものすごく大事なことですが、新しいことを知っていることと新しい仕事をすることは別です。

新しい知識はとても大切です。でも、新しい仕事をしたいのなら過去の歴史を知る必要がある。歴史を知っているからこそ、それを乗り越えることができるのですから。よく言いますよね、「愚者は経験に学び 賢者は歴史に学ぶ そして聖人は経験から悟る」と。歴史を知らないと自分がどの辺にいるのかさえわかりません。



藤本 たしかに、表現も共有された知識のもとで進歩しているので、共有されているものが何なのかわかっていないと理解できません。今のクリエイティブはいろんな要素が絡まって本質が見えにくいときもあるけれど、過去のクリエイティブはシンプルなぶん何が大事なのかが見える。だから勉強するにはもってこいだと思います。

杉山 うん、過去の広告を学ぶと人への理解が少し深まるような気がします。結局、アイデアとは人のハートに訴えて理解させるためのものだから、人間に対して音痴だとまずい。「人は意外に、こんなことは許すのに、ここは許せないんだ」というふうに、人には摩訶不思議な部分がある。そこのセンスを勘違いすると逆鱗に触れて炎上したりするわけで、もっと人への理解を深めていくことが大切です。

藤本 今日は、電通に入社した時からずっと大スターだった杉山さんに直接つくり手としてのお話を聞くことができて、世の中に大きな影響を及ぼすような広告が、どんなことを肌で感じながら、どういう風につくられたのか垣間見ることができました。ありがとうございました。

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