マーケティングの現場で起きているデータ分析時に陥りがちな罠 #01

FacebookとP&Gでの経験から気づいた「データ分析の罠」

 こんにちは。Facebook Japan中村淳一です。現在、Facebook社マーケティングサイエンス ノースイーストアジア地域統括として、日本と韓国を担当しています。

 マーケティングサイエンスは聞き慣れない部署だと思いますが、簡単に言うと、当社のシステムで使われている日々変わるアルゴリズムのデータ分析をもとに、クライアントのマーケティング活動をより効率的にしていくお手伝いをしている部署です。

 Facebook社に参画する前は大手外資系消費財メーカーであるP&Gの消費者市場戦略本部という部署に約15年在籍し、マーケティング戦略立案のために消費者インサイトや需要予測の数学モデルの構築・運用、メディアを含むROIをベースにした戦略立案などを担当していました。

 FacebookはIT、P&Gは消費財という全く異なる業種でのキャリアではありますが、ひとつの共通点はデータを分析し、その知見をマーケティング戦略や実際のプランに落としていった経験と実績です。

 今回の連載では、両社での経験を通じて気付いた「マーケティングの現場で起きているデータ分析時に陥りがちな罠」というテーマで読者の皆さまに私の経験を少し共有できればと思います。少しでも参考になれば幸いです。
 

マーケターの仕事は、売上・利益を上げるためのCause(原因)をつくること


 P&Gは世界でも有数のブランドマネジメント制度を開発・採用した会社です。ブランドマネジメントの定義は色々とあると思いますが、簡単に言えば、バランスシートやP/L責任がブランド単位になっており、かつ、ブランドマネージャーがその責任を負っています。

 言ってみれば、ブランドの数だけ子会社があるような状況です。結果、ブランドマネージャーはマーケティング戦略の立案と実行だけではなく、同時に経営責任を負うことになります。逆に言えば、どれほどマーケティングKPIが達成されたとしても、ブランドとしての売上や利益が上がらなければ評価されないシステムになっています。
 
写真提供:123RF

 Facebook社に入ってから多くのクライアントと働く機会に恵まれました。日本では数字やデータドリブンにこだわるマーケターは多いと思います。ただP&Gのように経営責任を負わされているマーケターは、それほど多くないという印象があります。

 例えば、CPAやCPMにこだわるマーケターは多くても、そもそもCPAやCPMがなぜ経営上一番大事な指標なのかを考えるマーケターはそれほど多くないのではないでしょうか?

 そして経営に深く関与するマーケターの役割はマーケティングKPIを達成することだけではなく、売上・利益のCause(原因)になるマーケティング戦略とプラン作成・実行になります。極端なケースを言えばどれほど世の中でバズが起きたとしても、それが売上・利益につながらなければ評価されません。

 むしろ結果が伴わなければ世の中でどれほど評価を受けても、経営者としての責任は取らされるのではないかと思います。ですから、常に売上・利益というResult(結果)を作るためのCause(原因)にこだわることが大事だと思います。



 P&GではそのようなCause(原因)をKPIではなくKBD、Key Business Driverと呼んで管理していく方法をとっています。消費者のプリファレンススコアやメディアの出稿量、店頭の露出量などはKBDの一部になります(KBDやその数学モデルのつくり方については長くなるのでまた別の機会にお話しできればと思います)。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録