RYUKYU note #04

沖縄国際通りに5店舗を構える、「首里石鹸」のユニークな出店戦略

 

道売りの実体験を生かして「1号店」を出店

 

 ――2016年に1店舗目をオープンしてから順調に店舗数を増やし、2020年7月には12店舗目をオープンしました。売上も2019年度は「SuiSavon-首里石鹸-」で4.3億円と、コールセンターの2.8億円を上回って伸びています。どのような戦略で、伸ばしていったのでしょうか。

 売上増加には、店舗数の拡大が重要です。そして、店舗はとにかく立地が全てだと思っています。ただ、ロジカルに出店計画を練っているわけではなく、街を歩いていい場所を探して「ここなら1日、これくらい売れるだろう」と予測します。私が道売りをしていた経験から、売れる場所がどこか感覚的に分かるんです。

 出店交渉の方法も少し変わっていて、私たちが出店したい場所で、すでにお店を運営している人に「順調ですか?」と突撃します。そこで「順調ではない」という返答であれば、私たちに任せてもらえませんかと交渉します。

 ちなみに1店舗目は首里城に近い当蔵というエリアに出店したのですが、そこも社員が歩いて見つけました。その頃は、まだ商品もないアイデアだけのとき。モノレールから首里城に向かう道沿いにあるお店が閉店作業をしていたのを社員が見つけて、その場で大家さんの連絡先を聞いて交渉したんです。

 

SuiSavon-首里石鹸- 当蔵ギャラリーショップ 本店

 そうして1店舗目の運営を始めたのですが、店舗単体で見れば利益は出ている一方で、通販やプロモーションなどを行うバックオフィスのメンバーの人件費まで含めると赤字でした。では、どうしたら利益が出るのか。店舗で売上が出ているなら、複数のお店を出せば、バックオフィスを含めて利益が出ると考えました。

 そこで、次の出店場所として目を付けたのは、私が県外から観光に来た友人を案内していた、絶景が見られるリゾート施設「瀬長島ウミカジテラス」。当時は、あまり観光客には知られていませんでしたが、早速出店させてほしいと打診したところ、私たちのような駆け出しのブランドを快く受け入れてくださり、嬉しかったです。ここでは月間300万円以上の売上が立つようになり、そのタイミングから積極的な店舗展開を目指しました。
 
SuiSavon-首里石鹸-ウミカジギャラリーショップ
 

国際通りに5店舗。観光地ならではの出店戦略


――その後、沖縄の観光地として有名な国際通りにも出店されていますね。

 はい、当時の私たちにとって頂上と言える場所は、最も観光客がにぎわう国際通りでした。そこで、通りの人気店に訪問しては「ここ空きませんか」と聞いて、よく怒られていました(笑)。

 でも、そうやって動いていると、突撃先の店主から国際通りの物件を持つ不動産屋や地主を紹介してもらえるんです。その流れで紹介してもらってオープンできた店舗もあります。
 
SuiSavon-首里石鹸-国際通り松尾ギャラリーショップ

 私の分析では国際通りは、1.5キロの商店街の中に観光客が入ってくるルートが5本あるんです。そして観光客は特別な目的地がなければ、車を降りた駐車場を起点に500メートル程度しか回らないと分析しています。そうすると、国際通りは5箇所のエリアに分かれるんです。

 この5箇所は、基本的に「売上を食い合わない」と仮説を立てています。国際通りに出店している店舗を調べてみると、13人ほどのオーナーが7店舗以上を展開している事実もこの仮説を裏付けています。そこで松尾店を皮切りに、一挙に出店攻勢を仕掛けました。

――7月にオープンした店舗も含めて、現在は国際通りに5店舗を展開されていますが、実際にそれで売上は立つのですか。

 はい、もちろんです。おもしろいのは、4月にオープンした牧志店はもともとあった松尾店と同じ通り沿いですが、牧志店のオープン後に、松尾店は過去最高の売上をたたき出しているんです。店舗ごとのオリジナル商品もつくっていますが、基本的に同じ商品を置いています。
 
SuiSavon-首里石鹸- 国際通り 牧志ギャラリーショップ

 同様の経験は過去にもあって、瀬長島ウミカジテラスに契約の関係で一時期2店舗出していたんです。もともとは1店舗で300万円という売上目標でしたが、2店舗ならば150万円ずつの売上になると予想していたましたが、蓋を開けてみたら2店舗で550万円の売上。これも国際通りと同じ理論で、瀬長島ウミカジテラスには16段の階段で上下で分かれており、上で遊ぶ人と下で遊ぶ人で、来店客が重ならなかったんです。

 もうひとつ、狭い観光エリアに何店舗も出店する効果として感じているのは、何度か見かけるうちに記憶に刷り込まれることです。例えば、私は三重県に行くまで「三重そば」というそばがあることを知らなかったのですが、伊勢神宮に行く道すがら「三重そば」という看板の店舗をたくさん見ました。そしてお腹が空いて「三重そば」を食べようと思ったときに、入店した店舗は何回も見かけた看板のお店でした。人気があるように感じるんでしょうね。

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