音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #18

「他人のせいにしない」という気概が、ビジネスで大事な理由【音部で壁打ち】

前回の記事:
ブランドマネジメントの文化とは、「善悪の判断基準」の導入である【音部で壁打ち】
 「ブランドマネジメントの文化を導入するために、組織が理解しておくべきことは何か」という問いに対して、音部さんが答えます。前編では「文化とは何か」「理念の共有するための考え方」について触れ、後編では「他責にしない」「知識を尊重する文化」について解説します。
 

「他責にしない」のも重要な気概


【質問】

ブランドマネジメントやマーケティングマネジメントの文化を導入する際、「利益の確立のため」以外に、組織に認識させておいた方がいい課題は、何がありますか?

 (前編は、こちら)他人のせいにしないのも、著しく重要な文化です。倫理的によくないとか、大人としてカッコ悪いということに加えて、現実的な理由もあります。失敗を他人のせいにしていると、成功を自分で管理できなくなってしまいます。

 理不尽なものも含め、失敗を全面的に自分のせいにできることで、成功も自分で管理可能になります。他人のせいにしていると、失敗の責め苦を軽くできる代わりに、成功が運や人任せになってしまいます。プロフェッショナルとして、いささか心もとないことでしょう。

 この気概を持つときにありがちなのは、「他責をやめるために、全部自分で決めなければいけない」という勘違いです。「全部おれが背負うんだ」というのは、ヒーローとしてはカッコイイですが、現実的ではないので、むしろ迷惑です。

 結果、簡単にマイクロマネジメントに陥り、オペレーションが破綻していきます。どれだけ責任感が強くても、1日は24時間しかなく、認知能力には(自分が考えるよりも低い)限界があり、睡眠時間がゼロでは機能喪失していきます。

 この勘違いは職位を高めるにつれ致命的になっていくかもしれません。「目的と戦略」による権限委譲と、「プロセス」による責任管理を確立することも重要です。
 

能力について「知識を尊重する文化」


 プロフェッショナルとしての能力や成長は、直接のあるいは間接的な経験による「知識の獲得」によってなされます。ここでいう「知識」は書籍などから得られる静的な知識だけではありません。自分や組織の経験を通して得られた経験値や、人間関係の把握なども含みます。つまり知識を獲得するとは、すなわち「やり方がわかること」です。

 プロジェクトごとに、自分やチームは何を学んだのか、明示できる組織は成長が早いでしょう。やりっぱなしで、すぐに次のアクションという組織は忙しくて充実した気分になれますが、成長しにくいかもしれません。

 15年目と10年目を比較したとき、必ずしも15年目が優秀とは限りません。優秀さを示すのに、年数が第一の変数ではないということです。年功序列を排斥する論理がこれです。
 
出典:123RF

 とはいえ、同じ人の15年目は、10年目よりも強力でありたいと思います。体力は相応に衰えていたとしても、経験値や知識は強化されているべきです。マーケティングのような知的生産の分野において、5年前の自分より劣化しているべきではありません。能力や成長はほとんど知識の増加(=学び)と同義だと理解し、そうした知識や学びを尊ぶことのできる文化を育むことは、個々のプロフェッショナルの育成にも、組織の構築にもきわめて重要です。

 ちなみに、知識とは独立した要素だと思われがちな「やる気や根性」も、かなりのレベルまで知識によって管理可能です。「このままいけば目標を達成できる、あと少しがんばれ」とか「みんなが応援してくれているぞ、がんばろう」と思えば士気もあがります。この「このままいけば目標を達成できる」とか「みんなが応援してくれている」というのも、広い意味では知識です。

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