ネプラス・ユー開催 特別寄稿
マーケターは「テックオタク」ではダメ、「テックゴリラ」になれ
2020/08/24
進化するテクノロジー、導入の成功率は高まっているのか?
MA(マーケティングオートメーション)ツール、BI(ビジネスインテリジェンス)ツール、AI(人工知能)ソリューション・・・。
私はLIFULL HOME’Sで、12年間働く中で、数々の最新テクノロジーの導入を経験してきた。何年も継続して利用している成功事例がある一方、実際のところ失敗も多い。一見、成功に見えても実は十分に活用しきれていなかったり、導入したまま放置されていたり、時には立場の違う人からの反発に遭い、導入とリプレイスを繰り返すことも多く見かける。
SaaSの時代、ベンダーサイドとしても売れれば、終わりとはいかない。継続的に活用されなければ、いつかはツールのせいにされ、評判を落とすことにも繋がる。それを未然に防ぐためのプリセールスやカスタマーサクセスの取り組みは、年々高コスト化の様相を呈している。
これだけマーケティングテクノロジーが進化し、ツール導入のハードルもリスクも極限まで低減された、恵まれた環境にあれば、以前よりもずっとバラ色な成功事例がたくさん出てきているはずだ。しかし筆者の肌感覚として、そこまで全体として成功率が高まっているとは思えない。
「自分のプランは完璧だから大丈夫」と思っていても、何か重要な視点を見落としてはいないだろうか・・・。常に問い続けなければ、足元をすくわれることになる。
成功と失敗を分かつものは何か?
テクノロジー導入が失敗に向かう要因は、個人的な経験から分析するに、2つのパターンがある。まず、ひとつ目が目的と手段の設定の時点で失敗している場合だ。
1.目的と手段の設定の時点で失敗
- 目的が曖昧なまま進めてしまい、ツール導入という手段が目的と化す。
- 複数の目的を掲げてしまい、リソースの分散と実装の矛盾を生み出す。
- 目的に対してツールや技術の思想を理解しないまま進めてしまい、想定外の実装、利用を引き起こし、効果が十分に発揮されない。
仮にこうした目的と手段の設定が上手くいっても、失敗してしまう可能性がある。2つ目のパターンが、組織や人の壁に阻まれる場合だ。
2.組織や人の壁に阻まれる失敗
- 組織が旧来の成功体験に支配され、デジタルアレルギーがある。
- 「現場を分かっていない」というバイアスをかけられ、運用の協力を得られない。
- 運用面を気にし過ぎるあまり、肝心の顧客体験が犠牲になる。
これらは、推進するための組織や環境の問題と、推進する人間の能力の問題が混合されているが、前者の問題、つまり推進する上での環境が劣悪だったとしても、推進者の能力が高ければこれを克服できるかもしれない。
つまるところ、テクノロジー導入を成功させるためには、推進者の能力がまだまだ鍵を握っていると言わざるを得ない。魔法の杖をふるうためには、魔法使いとしての資質が必要なのだ。では、推進者に求められる能力とは何か?