マーケターズロード 鹿毛康司 #05

本邦初公開。鹿毛康司が明かすマーケティングの盲点と、クリエイティブの真実

前回の記事:
最初から御膳立てされた、ステージなんて誰にもない―鹿毛康司
 

マーケティングが無くて、クリエイティブがあるわけがない


 先日、インフォバーンの役員である田中準也さん(取締役 COO)に言われました。「鹿毛さんってクリエイティブやらSNSの申し子みたいにみんな思ってるけど、本当はデータドリブンの人ですよね」と。

 そうなんですよね(笑)、私はそもそもマーケターですから。そこはけっこう、やっています。というか、それがないとクリエイティブをやっちゃいけないくらいに思っています。 
   
鹿毛康司(かげ・こうじ)1959年福岡県生まれ。早稲田大学商学部卒業後、雪印乳業(現・雪印メグミルク)に入社。ドレクセル大学にてMBA取得(マーケティング、国際ビジネス)。帰国後、同社の営業改革を担当。2000年の雪印集団食中毒事件、2001年の牛肉偽装事件における被害者・マスコミ対応の前線に立つ。その後、2003年にエステー入社。15年にわたりコミュニケーション領域の責任者として活動し、戦略づくりだけでなく、プランナー、CM監督、コピーライター、作詞作曲家として独自のスタイルを築く。2011年の東日本大震災直後に手がけた「消臭力CM」は好感度日本1位を獲得(CM総合研究所11年8月)。ACC Gold、マーケターオブザイヤー(MCEI)、WEB人貢献賞など受賞。2020年かげこうじ事務所設立。

 よくパネルディスカッションや講演会で人前に出るときは、「やたら瞬間に閃いてアイデア勝負の人」という役柄を演じてきました。だから、徳力基彦(note プロデューサー)さんや、富永朋信さん(Preferred Networks 執行役員)には「みんな鹿毛さんのことを誤解するし、そういう表面上のやり方でやればいいんだと若手が勘違いするから、本当のところをちゃんと言ってください」と怒られます(笑)。

 確かに、実はみなさんが驚くぐらいにマーケティング戦略を練っています。ただし、どんなに考え抜いたマーケティング戦略の企画書があっても、世の中ではコトは起きない。それが現実に起こるには、さまざまなクリエイティブというカタチに変換しないといけない。マーケティングは、そこが盲点ですよね。

 例えば商品開発、ショップづくり、Webサイト、プロモーションや広告といった何らかのアウトプット。つまりは、クリエイティブが世の中に出て初めてコトが起きるわけですよね。だからみなさん、クリエイティブに悩んでいるし、その変換の要となるチームづくりや広告会社との仕事をどうしたら良いのかと質問されます。

 そもそも、私がなぜマーケターでありながらも、違う筋肉のクリエイティブに手を出したかと言うと、それはズバリ、広告予算と広告業界での地位が低いために、優秀なクリエイティブ人材が安定的に来てくれなかったという背景がありました。

 いまでは、日本トップクラスの篠原誠さん(篠原誠事務所 クリエイティブディレクター)なんかが参画してくれるようになり状況が変わっていますが、一時期、本当に困り果てていました。だから自分でするしかなかったし、自分がしてみたら上手くいくので、ずっとやり続けていました。

 そういうわけで、マーケティングとクリエイティブの両方をやっている珍しい人になってしまったんですが、すると皆さん、「鹿毛さんの話はマネはできない」「再現性はない」と口を揃えて言う。

 その通りで、「クリエイターの鹿毛康司」という再現性は正直ないです。篠原誠さんの再現性も同じくないはずで、なぜならそれは個人のクリエイティビティの話だからです。

 ただ、クリエイティブ変換のためのチームづくり、そしてそのマネジメントは、再現できると思っています。ひょっとしたら参考になるかもしれませんので、ちょっとお堅いクリエイティブの話をします。

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