マーケターズロード 鹿毛康司 #05

本邦初公開。鹿毛康司が明かすマーケティングの盲点と、クリエイティブの真実

 

クリエイティブを因数分解してマネジメントする


 “クリエイティブ”という言葉を、皆さんざっくりと捉えて使っていると思うのですが、因数分解すると、どういうものなのかがより見えてくると思います。

 まずはマーケティング戦略をどうやってクリエイティブに落とし込むかというクリエイティブがあります。例えば、2011年5月に書いた私の汚い文字が並ぶ、ホワイトボードがこれです。



 消臭力のマーケティング、ブランディングの話があった上での図ですが、そこからどうクリエイティブ展開するかのシナリオがここに書いてあります。

 “震災直後ACのCMだらけの時に、それに寄り添いつつも心の奥底で笑ってもらってネットで遊んでもらう。コミュニケーションテーマは、「日常に戻ろう」。エステーの心意気でCM制作と放送を決断した鈴木社長(現会長)のメッセージは、報道というカタチになるように動く。西川貴教さんなどのTwitterでのつぶやきに沿って、SNSでコミュニケーションを展開する。その上で少年の名前がミゲルであることを紹介し、プロモーションを展開していく。”

 この構想が現実になるかどうかは誰もわかりませんが、いつもこういうクリエイティブの大きな方向性をつくってメンバーと共有しています。たいてい話していることは、マーケティングと予算とムーブメントのことです。ちょっと型にはめて説明すると、マーケティング(Marketing)のM、予算(Money)のM、ムーブメント(Movement)のMと、自分では密かに整理していました。

 いわばクリエイティブの「What to づくり」です。メディアの使い方だとか、ジャストアイデアのCM絵コンテや動画、サイト案などは、この段階では、あえていれないようにしています。そういう施策ばかりを話していても明確なクリエイティブの方向性が生まれずに、後々とっ散らかったクリエイティブになってしまうからです。



 この部分をクリエイティブではないと言う人もいますが、私はこここそが一番重要なところで、広告主側もきちんと勉強して、どんどん積極的に意見を戦わせるべきだと思っています。

 「なんかいいアイデアないかな」というのは、本当はよくないですよね。一方で優秀なCD(クリエイティブディレクター)の存在は大きいと思います。エステーの場合は私がそれをやっていたというのが、ちょっと特殊ですが。きちんとチームをつくってやれば再現性はあると思います。

 なぜ、この仕事が大事かというと「このあと生み出すクリエイティブの判断基準」がチームで明確になるからです。もっと言えば「クリエイティブの良し悪しを決める判断基準」を、この段階で明確に持つということ。それが成功の鍵だと思っています。これはよくいうオリエンシートとは違って、もっと深く本質を言語化できないところまで含めて、メンバーで共有する感じです。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録