RYUKYU note #05

知る人ぞ知る、沖縄高級ホテル「百名伽藍」。広告費かけず、数年先まで予約が埋まる理由

 

広告費をかけない。それでも数年先まで予約が埋まる理由


――オープン後は、どのような戦略で進めたのでしょうか。

 オープンから一貫しているのは、集客はクチコミだけで行うということ。なので、テレビの取材はたまに受けるものの、広告費はほとんどかけていません。

 また、シーズナリティは設けずに、平日も年末年始も全く同じ価格設定にしています。いつ来ても魅力は変わらないという考えでそうしているのですが、最初はホテル業界から何を考えているんだ、という声もあったと聞きました(笑)。

 ただ実際にやってみると、何年も先の大晦日まで、予約で埋まっているので、これはこれで良いのかなと思っています。

――クチコミだけで集客できるというのは、ブランドあってのことかと思います。百名伽藍のブランドを形づくる要素は建物やロケーションなどいろいろあると思いますが、何が最も寄与していると思いますか。

 すべて大事ですが、ひとつだけあげるなら従業員のサービスでしょうか。特に、今は沖縄に観光向けのホテルが増えて、その中にはハイブランドも出てくるなど、沖縄の観光地としての幅が広がっています。では、どこで差別化していくのかと考えたとき、一番がサービス面になければ、戦えないと思いました。

 当社は百名伽藍のオープン当初から、ホテル経験者を入社させるのではなく、当社が展開している飲食店の中でお客さまアンケートの評価が高い従業員に声をかけて、ホテル事業に移ってもらっています。今は新卒でホテルに配属される人もいますが、中心となっているのは飲食店から来た人ばかり。もちろん礼儀作法などの教育は必要ですが、ホテルスタッフには「あなたの良心に従ってサービスしてください」と話しています。

 マニュアルをつくっていないので、ひとつ間違えば、きついお叱りを受けることもあるのですが、あまり型にはめない方が、沖縄の人の良いところを引き出すことができ、良い結果につながると感じます。

 たとえば、何日か宿泊されている方がいて、その方はこの滞在を前々からとても楽しみにされていたのに、ずっと雨が続いていた。でも、最終日の朝方はきれいに晴れて、虹が出ていた。それを見た従業員が客室に「お客さま、虹が出ました」と電話するんです。もちろん喜んでいただきたくてとった行動ですが、朝方のため一歩間違えればお叱りを受ける可能性もあります。こうした行動は、マニュアルでは生み出せないものです。



――沖縄の人の良さを引き出すために、具体的に行っていることはあるのですか。

 具体的には教えられないので、ただ「あなたの良心に従った判断基準でサービスしてください」と、言葉で伝えるしかないと思っています。びしっとカッコつける必要はなく、分かりやすく言えば、方言でなまっていても構わないから、対面ではなくて横で寄り添ってサービスをしなさいと伝えています。抽象的ではありますが、繰り返し伝えていくしかないと思っています。

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