音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #19
コロナ禍のマーケティング、変わるものと、変わらないもの【音部で壁打ち】
マーケティングで変わるものと、変わらないもの
ブランディングの根本的な考え方自体は、大きく変わることがないように思います。ブランドの「意味」を構築することは、「いい商品」を定義するマーケテイングと同様、人間の認識の仕方など変化しにくい部分に立脚する活動だからです。
同時に、消費者が置かれた環境や状況といった、具体的なニーズやベネフィットに大きな影響を与える諸要素は激しく変化しそうです。また、そうしたベネフィットを提供する手段として製品や流通、コミュニケーションのあり方、あるいは価格の考え方なども今まで以上の速さで変化していくことでしょう。
こうした不易と流行を捉えるにあたって、マーケティングやブランディングのやり方を「料理の方法」、具体的なニーズやベネフィット、活動や手法などを「食材と時代ごとの献立の傾向」に例えることができるかもしれません。時代を経ても、料理の方法は本質的には大きく変わりません。それでも、10年前にはスーパーに売ってなかった食材が普通に買えるようになり、新しい種類の調理器具が開発される、といった変化は止むことなく続いていくでしょう。
外的環境が激しく変化する際にも、マーケティングの変化しない普遍的な部分と、時代とともに変化し流動する部分を正しく認識できれば、体幹が安定して臨機応変に機敏に対応しやすくなると思います。
これから起きる最大の変化には、デジタルの従来からの「計測可能性」という側面に加えて、「非接触性」という重要属性の実現が含まれるかもしれません。デジタル技術によって消費者の活動や反応を仔細に計測し、膨大な量を分析し、コミュニケーションや施策といった知覚刺激の質と量を最適化するのが、データにもとづくマーケティング手法の洗練のひとつでした。今後、そうして得られた知見を通して、非接触のサービスやプロダクト提供手段の充実も進んでいくかもしれません。ビデオ会議などのオンライン化はそのわかりやすい発現ですし、EコマースやD2Cも似た作用をもっているでしょう。
元来、人間は人と人の間に存在する社会的な存在ですから、他者との接点を喪失することは本能的に忌避したいはずです。「非接触」と「多様な接点の維持」を同時に可能にするものは、着目する価値があるように思います。
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