ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #20

サイバーエージェントと、スマートニュースで学んだ「ファン目線」の大事さ

 

タレント活動をあっさり辞めて、サイバーエージェントに就職


徳力 そこから新卒でサイバーエージェントに入社されるわけですよね。学生時代からテレビに出ていたのに、就職されたのは、なぜですか。

山崎 僕自身が人気になっているというよりも、宇多田ヒカルさんなどのすばらしい楽曲をコピーし、それが「ハモネプ」というフォーマットに乗ることで人気が出ていると考えていました。音楽は好きですが、自分をアーティストだと思ったことは、一度もなかったですね。

徳力
 出演していた人が裏方に回るというのは、珍しいですよね。性格的にも、その方が向いていたのかもしれません。

山崎
 そうですね。とはいえ、スマートニュースでもプロモーションのためにテレビ出演していたので、出ることに抵抗はないんです。

徳力 サイバーエージェントに入社されたのは、なぜですか。

山崎 いろいろな会社のインターンに行ったなかで、一番しっくり来たんです。大学では経営戦略のゼミに入っていたので、周りはコンサルティング会社に行く人が多かったのですが、サイバーエージェントの人が一番生き生きして見えました。「自分で決めて、自分で責任を負いながらやる」という文化も、僕の性格に合っている気がしました。

徳力 では、インターネット系の会社に絞っていたわけでも、サイバーエージェントで特段何かやりたいことがあったわけでもなく。

山崎 はい。今、振り返ると、小さなチームでスピーディーに事業に挑戦できるところに魅力を感じていたのだと思います。そういう会社であれば、短い修業期間で、若くして責任あるポジションにつけますよね。
 

自分自身もプレイヤーであることが、ファン視点をつくる


徳力 サイバーエージェントでは、主に何を担当されていたのですか。

山崎 最初はアメーバ事業部に配属されて、データアナリストをしていました。2013年当時は、「怪盗ロワイヤル(DeNA)」や牧場系ゲームが流行っていた頃、バトルカードゲームのグラフィックのクオリティがガンガン上がっているときで、社内でもブラウザゲームをたくさんリリースしていましたね。

その一方で、経営側としては、きちんとデータを蓄積して、売上アップや離脱防止しなければというフェーズになっていて、経営直下でデータを分析していました。

徳力 出身学部は、文系でしたよね。

山崎 はい。ただ、ゼミで統計を学んでいましたので。それに、実際はアナリストというよりも、プロデューサーの横についてデータ基盤や戦略を一緒に考えるような仕事でした。例えば、こういう状況だと離脱しやすいから、設計をこう変えようと提案したり。

それまでは、スマートフォンのアプリで数10億円の売上ができるというイメージは全然わかなかったのですが、入社して手触りのような感覚で、それが分かるようになりました。



徳力 おもしろいのは、いまの「手触り」という言葉ですね。数字だけ見てしまうと、ユーザーの心を忘れがち。でも、山崎さんから手触りという言葉が出てくるというのは、データだけにこだわっていないからだと思います。

山崎 そうですね。難しいですが、例えば、ゲームでダウンロード初日にステージ3まで到達すると、「ARPU(Average Revenue Per User/1ユーザーあたりの平均売上)」が上がるというデータがあるとします。

では、全員が簡単にステージ3に到達できるように設計すれば、ARPUが上がるかといえば、そうではないんです。その間に、何を体験するかが、継続理由につながるわけなので、ステージ3に到達するまでの時間を短くしたり、簡単にしたりするのは、適切なソリューションではないんです。

徳力 多くの人が、だまされやすいパターンですよね。なぜ、ユーザーの体験を見ないことが起きてしまうのでしょうか。

山崎 自分でプレイしていないんじゃないでしょうか。先ほどの例で言えば、重要なのは、ステージ3までにライフが減ったり、友だちに助けてもらったり、強い敵を倒したりといった経験をするから継続するということ。数字の分析だけでは、因数分解の解像度が低すぎるんです。

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