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「期待しないことの大切さ」アーティスト自らが語る、オンライン上の立ち振る舞い【SKY-HIインタビュー】

 ヒップホップのみならず、ロックやサブカルチャーなど幅広い領域から注目を集めるアーティストのSKY-HI氏と、動画コンテンツのプロデュースなどを手がけるALPHABOAT(アルファボート)の社長 西谷大蔵氏が、音楽におけるマーケティングをテーマに対談。

 SKY-HI氏は、コロナ禍でツアーが中止になったタイミングに、自宅からオンラインライブを開催するなど、積極的に新しい展開を仕掛けている。オンラインにおけるアーティストとファンとの交流や、今後のエンターテインメントの在り方について、自らの考えを語ってもらった。
 

延期したツアーの代わりにオンラインライブを開催


西谷 まず最初に、SKY-HIさんはいわゆる「マーケティング」に対して、どのようなイメージを持たれていますか。

SKY-HI 僕が考えるマーケティングは、「顧客がいる市場がどこにあるかを調べること」。それで言うと、音楽業界は世界的にはストリーミング市場が拡大していますが、日本はまだCD市場と横並び、もしくは少しずつCDの方が小さくなっているという状況ですよね。その一方で、映像市場は伸びているという印象です。  
  
SKY-HI圧倒的なRAPスキルのみならず、卓越したボーカル&ダンス&トラックメイキングスキルを武器にエンターテインメント性溢れるコンテンツをセルフプロデュースで創り上げる日本の音楽シーンの新たな可能性を示すアーティスト。

西谷 一般的にマーケティングと聞くと、広告宣伝をイメージする人が多いのですが、「市場」という本質的な言葉が出てきたことに驚きました。

実は以前からSKY-HIさんに、「マーケターマインド」のようなものを感じていたんです。先日も新型コロナの影響で、せっかく企画されていたツアーやニューアルバムの発売が延期になったとき、ライブ配信など素早くオンラインを活用されましたよね。そこに至るまでに、いろいろな葛藤や想いがあったと思うのですが、いかがでしたか。

SKY-HI 発想は、わりとシンプルでしたね。ツアーがダメになったり、ニューアルバムの発売が延期になったりすると、自分が描いている1~2年後のプラン、下手したら5年後、10年後の目標が全部組み直しになってしまいます。

私は人の前に立つという職業ですが、多くの意見に直接触れることができたり、SNSを通して不安で荒んでいく人の心を直に見る機会が増えたりして、私自身もメンタルがやられている感じがありました。

医療従事者はもちろん、テレワークで普段と変わらずに仕事をできている人も不安を抱えている様子が垣間見えて、それが人と人との分断を深めているな、と。

西谷 コロナがやっかいなのは、どのような対応が正しいか言いきれないことですよね。一方でSKY-HIさんのSNSを拝見していると、本質をうまく突いていることが多いと感じるのですが、コロナへの対応のような人や場面によって受け取り方が変わる話題に言及するときに、注意されていることはありますか。  

西谷大蔵氏
ALPHABOAT社長/SCデジタルメディア 取締役/住友商事 メディア事業本部メディアエンターテイメント事業部Executive Producer
電通、ウォルト・ディズニー・ジャパン、Apple (Japan)などを経て2017年より現職。キャリア前半はTV、後半はデジタルを基軸にメディア、マーケティング、広告、コンテンツに携わること20年以上。現在はALPHABOAT社でソーシャル・コンテンツ、デジタル・コンテンツなど、マーケティング・コミュニケーションの中でも新しい領域のコンテンツ制作をリード。

SKY-HI 一番は期待しないことだと思っています。SNSは付加価値的なものとして自由に遊び、使うときは使うけれど、「(自分にとって)こういうプラスがあるかも?」とは、考えないほうがいいんです。

SNSで「バズる」というのは、ゴールデンのテレビ番組に5分くらい出るという感覚に近い(笑)。だから、SNSを使ってバズらせることをゴールにしたり、こういうふうにモノを流行らせたりしようという考え方は、間違っていると思います。

この「期待しない」という考え方は、SNSに限ったものでなくて、たとえばオンラインでライブをしていたら、「今後はこういう形が主流になっていくと思いますか?」と聞かれるんですが、たぶんそれはない。

東日本大震災という衝撃的な出来事が起きても、1年後には何も変わらなかったようにライブは行われたし、人々の音楽やエンターテインメントに対する価値観も変わらなかった。

世の中は螺旋階段をのぼるみたいに、ゆっくりとしか変わってはいかないんです。だから、コロナを機にテレワークが進んでも、東京がシリコンバレーみたいになることも、ライブがオンラインだけで行われて、いつでもどこでも見られるコンテンツが次々と生まれる、という状況も起きないように思います。少しずつ、そういう方向に広がっていくけど、それが実現になるのは10年後ではないでしょうか。

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