米田恵美子琉 市場創造の「すすめ方」 #01
RIZAP、P&G「ファブリーズ」に学ぶ、市場創造の方法【インサイト・ピークス 米田恵美子】
ファブリーズ登場で市場全体も活性化
私自身の「市場創造」の成功体験をひとつご紹介させていただきます。市場創造の例として、マーケティングセミナーなどでよく紹介されるP&Gの消臭芳香剤「ファブリーズ」があります。私はファブリーズを世に出す準備から、発売後2年間、売り上げを軌道に乗せるまでの戦略を立てるという経験をしました。
ファブリーズが世の中に売り出される前は、布地のニオイが気になった場合の「行動」は、洗濯するか、我慢するか、捨てるかのどれかでした。下着や洋服など洗濯できるものは洗濯するけれど、シーツやカーテンのようにかさ張るものは頻繁に洗濯できないため、少しのニオイなら我慢する。ソファや枕など、洗濯できないモノのニオイが気になり始めたら、捨てるしかない。それは、仕方のないことで、当たり前でした。
そこにファブリーズが登場して、「いやいや、仕方なくなんかないよ。我慢しなくてもいいし、捨てなくてもいいよ」と言って、新しい「行動」を提言したのです。
ファブリーズは「布地のニオイをスプレーして取り除く」という、それまで全く存在しなかった「行動」を提言し、その習慣化に成功しました。そして、新しい「行動」が生み出されたことで、ファブリーズの発売から10年間に消臭芳香剤の市場は約2倍に拡大しました。
拡大した市場の売上をファブリーズが独り占めしたわけではありません。ファブリーズの発売を機にニオイに対する消費者の意識が促進され、ニオイ対策の行動をとる人の数や頻度が増え続け、市場全体が活性化したのです。
諦めていることに市場創造のチャンスがある
先にあげたライザップの例に戻ると、同社は諦めていた人を市場に引き込むことに成功しています。「スタイルがいいとカッコイイけど、今さら自分には無理だ」「頑張ったところで、結果が出るわけない」と思っている人たちに、「ライザップが一緒に頑張って、結果をコミットするから」と、新たな行動を始めるきっかけをつくったのです。諦めている人に「もうこれで諦めてなくてもいいんだ」と信じてもらえる解決策として、新しい行動を提言し、それが受け入れてもらえたとき、新しい市場が生まれる。
そう考えると、実は私たちが生きている中で、「こういうものだから、しょうがない」と諦めていることは、とてもたくさんあります。
実は、そこに市場創造や市場拡大のチャンスが無限にある。そんな風に私は考えています。
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