よなよな流「ファンベース・ブランディング」―ファンの熱狂をブランドの力に変える方法 #03

「よなよなエール」流、熱狂的ファンの力を引き出す4つのトリガー【ヤッホーブルーイング 稲垣聡】

アドボケイツの力を引き出す4つの条件

 これまでの連載で書いたように、ファン(アドボケイツ)はブランドの認知拡大、新規顧客の態度変容を引き起こす力があります。

 しかし、その力が最大限発揮されるには、いくつかの条件があります。私が実務上で意識している、アドボケイツの推奨を加速する条件をご紹介します。

 私は、アドボケイツによる推奨が「推奨意向」だけで終わるか、それとも実際に「推奨行動」となって深く伝わるかは、以下の4つのトリガーの組み合わせに左右されると考えています。
 
  1.     推奨者と被推奨者の関係
  2.     推奨の機会
  3.     推奨の動機
  4.     物的証拠

 このうち、(1)は主に推奨の伝わりやすさに関わり、(2)・(3)はアドボケイツによる推奨のしやすさ、(4)は両方に関わるものとなります。
 

「推奨者と被推奨者の関係」:類は友を呼び、推奨する

 ひとつずつ説明していきます。



 まず、(1)の「推奨者と被推奨者の関係」です。推奨するファンは、推奨される人にとってどんな人でしょうか。
    
 社会心理学者のロバート・チャルディーニは、人は、自分と類似している人や、馴染みのある人からの影響を受けやすいとしています。「類は友を呼ぶ」と言いますが、付き合いの長い友人からの推奨は、非常に効果が高いと言えそうです。

 一方で、有名人などのいわゆる「インフルエンサー」の推奨力の高さはどう考えればいいのでしょうか。

 「インフルエンサー」と普通のフォロワーは友人ではありませんが、共通の興味関心がある場合が多いので、類似しているとも言えます。またインフルエンサーの持つ情報量が推奨を受ける人よりも多い場合、推奨は伝わりやすくなります。自分と興味関心が近い専門家の意見は、説得力があるというわけです。
 

昼間から仕事中にビールを薦める人はいない

 次は「推奨の機会」についてです。



 ファンによる口コミで認知が広がった「よなよなエール」ですが、まさかファンが知り合いに会うたびに推奨しているわけではありません。ビール会社ならまだしも、普通の会社にお勤めの方は、日中、仕事の合間にビールの話をするというのはモラル的にもNGでしょう。つまりブランドの推奨には最適なタイミングがあるわけです。

 当社が開催する、「よなよなエールの超宴」や「大人の醸造所見学ツアー」は最適な推奨の機会です。友人を誘うとき、イベントに向かう途中、イベント開催中と、少なくとも3回は推奨の機会を生み出せます。

 したがって、推奨の機会は企業側が積極的にプロデュースすることが必要です。また商材によっては、人に愛用していることが言いにくいモノもあります。その場合は、推奨の機会づくりはより難しくなります。

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