実務から見たビジネスマネジメント活用 #02

他社事例を自社に役立てるために使える「抽象化プロセス」とは?

 

抽象化した考え方を、自社に当てはめる


 このように、事例の「HOW部分」を省いていくことで、その企業がもともとやりたかったことを推測できるようになります。そして抽象化して事例を捉えられたら、その考え方を自社に当てはめていきます。

 このケースの場合、まず「顧客の満足度を把握している顧客接点はどこか」を把握することがスタートです。

 満足度アンケートをメールやLINEで取得している企業は多いですし、顧客の声はお客さま窓口(コールセンター)で受けているという場合もあると思います。EC事業者の場合は、商品レビュー機能で顧客の満足度を捉えられるかもしれません。

 そのうえで「満足度」を取得するまでの背景・プロセスを考慮したうえで、どのような顧客コミュニケーションができるかを考えていきます。

 お客さまが不満足であれば、お客さま窓口から電話をかけて、顧客のもつ課題を一緒に解決していくこともひとつですし、お客さま窓口から課題解決の手助けになるようなコンテンツを発信するのもひとつの手法です。

 また、満足している方には、さらなる自社商品の活用方法を提示することや、特に意見がなさそうな方には「何か不明点があったときには、ぜひお問い合わせください」といったご案内メッセージを送信することもできます。

 そして最終的には、それらを実施することで、どのようなメリットが自社に生み出されるかを考えていきます。顧客満足度やリテンション購入率のアップなど、さまざまな視点があると思います。
 

抽象化と応用②:「HOW」を上位概念に置き換えて抽象化




 続いて、さきほどのマーケティングオートメーション事例の具体的な部分である「HOW」を上位概念に置き換えて抽象化するプロセスをご紹介します。そのプロセスは、以下のようになります。
 
<抽象化プロセスの流れ>

顧客からの問い合わせに対応した後に満足度アンケートを送付。その内容に合わせて、オートメーションシナリオを実行する。



第一段階:
顧客が回答するアンケート内容に応じて、オートメーションシナリオを実行する(アンケートを送付する背景やアンケートの意味を省く)。



第二段階:
顧客の能動的インプット内容を基にオートメーションシナリオを実行する(アンケート回答をシステム的に捉えた場合の上位概念に置換する)。



第三段階:
顧客の能動的インプット内容を基にコミュニケーション施策を実行する(オートメーションシナリオを上位概念に置換する)。

 このように、事例の「HOW」を上位概念に置き換えることで、そのオートメーションツールにとらわれない取り組みとして捉えられます。そして、その抽象化した考え方を自社に当てはめていきます。

 このケースでは、「顧客の能動的インプット」により顧客情報が付加されることで、既存のコミュニケーション課題が解決する点になります。

 例えば、顧客の興味に合わせてコミュニケーション施策を展開したいと考えている企業において、実施に十分なデータが集まっていないといった課題があれば、顧客の興味をタッチポイント上で聴取することでデータがリッチになり、施策の実行に移すことができそうです。

 その他の例では、無数の商品を取り扱っているEC事業者が、どの商品をレコメンドしていいかわからないという課題があれば、予算や探している商品タイプを聞き、ユーザーに能動的にインプットしてもらうことで、レコメンデーションの精度が高まり、結果的に売上アップにつなげられそうです。

 このように「データ分析では限界がある」とあきらめていた課題を、事例から抽象化した「顧客からの能動的インプットを活用する」ことで、解決できるか仮説立てします。

 そして最終的には、それらを行うことでどのようなメリットが自社に生み出されるかを考えていきます。

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