トップマーケターが語る2021年の展望 #特別編

横山隆治氏が語る、2021年の広告業界【展望】

 

課題が山積みな「DX」の実現


 デジタルトランスフォーメーション(DX)については、デジタル庁はじめ各所で言われるになりましたが、やはり事業主側の課題が多すぎる感じがします。

 ひとつは組織の問題です。欧米では会社の中にマーケターはもちろんITのプロフェッショナルが在籍し、マーケティングの現場とITの両面が分かる人材がたくさんいます。それに対して、日本でもそうした人材がいないわけではないのですが、マーケティングは広告会社に、ITは情報システム部門がSIerに委託というように、組織としては頼らざるを得ない形になっています。

 もうひとつは、DXを推進できる「デジタル化人材」が不足していることです。何しろ「DX=人材育成」といっても過言ではないほど、人材とスキルの育成が大切です。そもそもデジタル化とIT化は一緒にされがちですが、この2つの意味合いは違い、デジタル化はどちらかと言えば文系の仕事かもしれません。ビジネスやサービス、顧客価値が分からなければ、どうしてもデータオリエンテッドに考え方が寄ってしまいます。そこで、現場やマーケティングが分かっている人が、顧客視点を大事にしながらデータやテクノロジーの使い方を発想することが大事になります。

 だからこそ、これからの広告会社は、企業のDXを支援することが使命になっていくはずです。それは、教育的な部分の支援や、人を派遣して組織のサポートをすることかもしれません。そして概念的に「DXとは何か」を捉える段階はもう済んでいるので、具体的に何を一緒にするか、エグゼキューションも含めて実績を積み上げていくことが求められていくと思います。
 

訪れるデータリセットに向けて、どう準備を進めるべきか


 もう一方で、コロナの裏で忘れられているかもしれませんが、非常に大事なポイントとして、「データの取り扱いをすべてリセットする時が訪れている」と考えています。

 米国のCCPA、欧州のGDPRなど、2022年頃から個人情報保護法の改正が始まれば、これまでCookieでつないでいたDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)などは本格的に使えない状態に陥り、許諾の取り直しを行う必要が出てきます。ですが、すべてに対応しようとすると膨大なコストがかかります。であれば、中途半端なデータは持っていない方がいいんですよね。

 そこで目指すのは、消費者が個人情報とトレードオフしたいと思うような価値のあるサービス。手間なく面倒臭さを取り除いてあげられるようなものであればいいですね。そうして交換を前提に得られるゼロパーティデータと呼ばれるものから、再構築されるサービスがつくられていくのではないかと考えています。あと1~2年の猶予はありますが、デジタル業界もひっくり返るほどの変革が起こると予想しています。

 データの取り扱いに関しては、企業姿勢として消費者のデータを大切に扱うのか、ポリシーのようなものを掲げることが大切になると思います。Appleはかなり意識していますよね。それを標榜した会社に信頼が集まり、ひいてはサービスとデータのトレードオフも受容してくれるようになると考えています。

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