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企業の投稿が44万いいね! 冷凍餃子の#手間抜き論争が大きく話題化した理由

 2020年8月、とあるユーザーがTwitterに「夕飯に冷凍餃子を出したら、旦那に手抜きだと言われた」と投稿。それに対して、冷凍餃子を発売する味の素冷凍食品の公式Twitterが「冷凍餃子を使うことは『手抜き』ではなく『手“間”抜き』ですよ」と返したところ、44万いいね!を集めて大きな話題となった。

 さらに、その論争がテレビ番組にも取り上げられ、同社が10月に公開したPR動画は90万回も再生、この一連の取り組みが「PRアワードグランプリ 2020」の受賞作品にも選ばれた。今回のPR施策の成功は、どのように実現したのか。味の素冷凍食品の公式Twitterアカウントの”中の人“と、同社のPRをサポートした本田哲也氏へのインタビューから、今後のPRに必要な要素が見えてきた。
 

Twitter投稿が話題化した裏側にあった思い


 8月4日、Twitter上のとある投稿が話題になった。それは、「夕ご飯をつくるのがしんどくて冷凍餃子にしたら、子どもは喜んでくれたけれど、旦那に手抜きだと言われた」という主婦の嘆きだった。

 この投稿に対して、味の素冷凍食品の公式Twitterアカウントは、2日後の8月6日に「冷凍餃子を使うことは『手抜き』ではなく『手“間”抜き』ですよ」と投稿。続けて、「冷凍食品を使うことで生まれた時間を、子どもに向き合うなど有意義なことに使ってほしい」と発信したところ、一連の投稿の合計いいね!数がおよそ44万と多くの共感を呼んだ。
 
味の素冷凍食品【公式】@ff_ajinomoto 

 味の素冷凍食品がTwitterアカウントの運用を始めたのは、2020年2月。きっかけは、食物アレルギーに配慮して小麦や卵、乳を使わない「冷凍から揚げ」の発売だった。ターゲットであるアレルギーを持つ人の多くがSNSを使って情報収集していることから、そういった人々とコミュニケーションを取りたいという狙いだ。

 “中の人”である運用担当者は、他の業務と並行しながら、空いた時間で自社に言及しているユーザーに対する返信や「いいね!」をするなど、数値的な目標を置かずに運用。自社の製品などに好意を持っている人に対し、より愛を深めてもらうことを重視していた。

 ことの発端となった投稿のように、ネガティブな要素も含む投稿に対して何らかのアクションを起こしたのは、今回が初めてだった。その理由について、“中の人”は、次のように振り返る。

 「私には、小学校低学年と未就学の子どもがいます。主人は単身赴任なので、家事や育児は基本的に一人でこなさなければならないのですが、その中で子どもと向き合う時間を生むのはとても難しくて・・・。冷凍食品は、うちの食卓にもよく上がり、それで浮いた時間を子どもとの会話に充てています。どこの家庭にもきっと、私と同じように料理に時間をかけるよりも自由に使える時間を増やしたいという思いがあるはずです。そこで、毎日の時間に余裕がなくて、できなかったことへの後悔が先立ってしまっている人に、冷凍食品を活用しても大丈夫なんだよ、ということを伝えたいと思いました」



 この「手抜きではなく手間抜き」という言葉自体は、以前から冷凍食品業界で使われてきたものだ。ただ、この言葉を使った啓蒙活動を各社が実施してきたが、まだまだ世の中に浸透しているとは言えなかった。

 その状況に対して、“中の人”は「家庭の料理は時間をかけて手づくりするべきであり、冷凍食品を使うなんて手抜きだ、という世の中の考えを覆したいという思いがあった」と語る。

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