実務から見たビジネスマネジメント活用 #03

マーケティングの打ち手が広がる「サービス・マネジメント」という考え方

前回の記事:
他社事例を自社に役立てるために使える「抽象化プロセス」とは?
 

マーケターが知っておくと便利「サービス・マネジメント」


 昨今、マーケティング界隈では、「サブスクリプション」「リカーリング」「リテンション」などの言葉が飛び交っており、顧客満足を起点として継続的な関係を築き、安定的な売上を構築すること、そしてその仕組みづくりに注目が集まっています。

 このような環境下で、マーケターとして意識しておきたい考え方があります。それが「サービス・マネジメント」です。

 サービス・マネジメントを理解すると、マーケティングの代表的なフレームワークである「4P」や「STP」では考慮しきれない範囲のことまで気づくことができるようになり、打ち手が増え、パフォーマンスの向上が見込めます。
 

サービス・マネジメントの概念とは?




 サービス・マネジメントとは、いわゆる「モノ」、例えば、「テレビ」「デジタル一眼カメラ」「ヘッドホン」などとは対照的な位置にある「無形の価値提供(サービス提供)」を対象にしたマネジメント論です。
 

代表的なフレームワーク「サービス・プロフィット・チェーン」

 サービス・マネジメントにおける、代表的なフレームワークが以下の「サービス・プロフィット・チェーン」です。
 
出典:Heskett, Sasser & Schlesinger (1997) The Service Profit Chain

 それを構成する大きな要素、「サービスの価値」「外部・顧客」「内部・自社」について解説していきます。
 
  • サービスの価値

 サービス・プロフィット・チェーンにおいて、企業と顧客は「サービスの価値」を媒介としてつながっています。この価値とは、競争優位性の観点では、マーケットの中で「顧客が望んでいるもので、自社が提供でき、他社では提供できないもの」を提供できることが望ましく、このような考え方のもとサービスを開発し、顧客に提供していくものです。
 
  • 外部・顧客

 サービス・プロフィット・チェーンにおいて「外部・顧客」の領域では、企業から受けた提供価値への満足、そして満足から発生するロイヤリティ、その向上により導き出される企業の収益性向上について示されています。

 まさに、昨今の「ファン・マーケティング」といった言葉に代表されるCRMの考え方そのものですが、提供される価値に満足し、ロイヤリティが高まることによって顧客が当該サービスを使い続ける、もしくは指名し続けることにより、顧客獲得コストを抑えられ、安定的な収益構造を実現するといった考え方です。そして、ここで生まれた収益がこれから説明する「内部・自社」に還元されます。
 
  • 内部・自社

 サービス・プロフィット・チェーンにおいて、「内部・自社」の領域では、従業員満足を起点としたサービスの品質向上に焦点が当てられています。ここで挙げられている「従業員満足」「ロイヤリティ」「生産性・アウトプットのクオリティ」「サービスのクオリティ」「ケイパビリティ」は、相互に作用しており、これらを好循環で回すことにより、事業の根幹である他社優位性を持ったサービスの価値を実現していく、といったものになります。

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