藤原義昭氏、コメ兵での成功体験をもとに新たな挑戦へ
――藤原さんのアイデアとスピードは、何に影響を受けていたのでしょうか?
業界自体が、デジタル化やマーケティングで遅れをとっていたので、他業種の取り組みを常にチェックし、そこから学んでいました。
5年後、どのような変化が起きるかを常に自分の頭で想像し、先行して施策を打てるようなアイデアのストックを持つことが重要だと思っていました。
――実際に取り組まれたことで、業界的にも斬新だったことはありますか?
リユース商品は在庫が限られ、一点ものが多くリアル店舗と通販をどのようにつなげていくかが課題として上がっていました。
その時、顧客はどのようにリアルとインターネットを使い分けているかが気になり、データ取得とその活用に乗り出しました。そこで分かったことが、時計など自分の好みのブランドがあって購入する顧客は、定期的にECサイトを閲覧しているということです。
そこで、マーケティングによりデータを活用しようと、2015年頃から情報システム部門をマーケティング部門内(当時の営業企画部門)に移設しました。
――どのようなことがデータで可視化できたのでしょうか?
2018年頃になるとジュエリーは3割、バックは4割、時計に至っては6割がECサイトを見てから店舗に来店し、商品を購入していることがわかりました。その結果を店舗スタッフにも伝えることで、ECが存在する意味や必要性の理解を得られ、よりデジタル化を加速できました。
それからは、顧客にその行動をさらにしてもらえれば売上も向上すると思い、365日欠かさず新商品を通販サイト上にアップするようにしました。顧客フローを自社誘導でつくり替えていったのです。
この時期はスマートフォンの普及も著しかったので、顧客のデジタル活用が増加すると想定し、企業としてもデジタル化を推し進めました。今でいうところのデジタルトランスフォーメンションです。
リユース業界の将来に思うこと
――それでもコロナ禍の2020年は、店舗を持つコメ兵にとっては厳しい年ではなかったですか?
店舗営業ができなくなると、売上も減少しました。いくらインターネットがあったとしても、単調なメールマガジンなどに顧客は反応しません。
そこで昨年3月、緊急事態宣言が出る前に、店舗スタッフにスマートフォンを持たせて、顧客とLINEでつながるように促しました。電話営業やメールよりもLINEの方がコミュニケーションを取りやすいという確信があったためです。
これもデータ分析により、3カ月に1回のコンタクトが顧客離れを防ぐと理解していたために実施できた施策でした。
自分自身もひとりの消費者という視点を持っていたからこそ、顧客のことを理解できますし、購入シーンも想像できました。もちろんそこに至るまでには、店舗に来店された顧客の動きや会話をずっと追って観察していた時期もありました。
――リユース業界の将来について、どう思っていますか?
市場規模としては、まだ小さいと感じています。新規参入する会社も増えてきていますが、店舗を持たないサービスもあったり、それぞれビジネスモデルは異なります。
高い商品を購入して買い取りに出すことや、リユース品の購入に抵抗がなくなっているなど、顧客側のマインドは高まっています。サスティナビリティーへの意識が高まることで、市場自体も拡大していくと思っています。
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