RYUKYU note #09 前編
プレミアムクラフトビールが好調。オリオンビール CMOが描く、沖縄発のブランド戦略
2021/03/22
沖縄県は土地柄や歴史的背景に本土と大きな違いがあることから、ビジネスの進め方も従来の方法では、うまくいかないケースがあります。連載「RYUKYU note」では沖縄で活躍する経営者やマーケターをバトンリレー形式でインタビューし、そのサクセスストーリーの裏側にある秘話や、沖縄ならではの戦略や課題、未来に繋がるストーリーをひも解いていきます。
第9回は、オリオンビールの専務執行役員CMOの吹田龍平太氏のインタビューをお届けします。オリオンビールは、2019年3月に野村キャピタル・パートナーズとカーライルに買収され、両社が設立したオーシャン・ホールディングスの傘下に入りました。吹田氏は、これまでにコカ・コーラやMHDモエ ヘネシー ディアジオ、ダイソンでマーケティング担当を歴任し、ゴディバでは商品企画の責任者としても活躍。2019年7月にオリオンビールのCMOに就任し、新体制となった同社のマーケティングを率いています。
自身の就任とともに誕生したマーケティング本部の組織づくり、これからのオリオンビールのマーケティング戦略や沖縄企業ならではの強みや弱みを語ってもらいました。
第9回は、オリオンビールの専務執行役員CMOの吹田龍平太氏のインタビューをお届けします。オリオンビールは、2019年3月に野村キャピタル・パートナーズとカーライルに買収され、両社が設立したオーシャン・ホールディングスの傘下に入りました。吹田氏は、これまでにコカ・コーラやMHDモエ ヘネシー ディアジオ、ダイソンでマーケティング担当を歴任し、ゴディバでは商品企画の責任者としても活躍。2019年7月にオリオンビールのCMOに就任し、新体制となった同社のマーケティングを率いています。
自身の就任とともに誕生したマーケティング本部の組織づくり、これからのオリオンビールのマーケティング戦略や沖縄企業ならではの強みや弱みを語ってもらいました。
県内に注力して競争力を上げてから、全国を目指す
――2019年7月の就任当時、オリオンビールの現状をどのように感じましたか。
オリオンビールは、沖縄の歴史ある企業として、良くも悪くものんびりとビジネスを続けて来られました。新しいことに関しても、何もしないのはまずいからと大手ビールメーカーの後を追うだけで、積極的に競争するというよりも受け身の活動をしてきたと思います。一方で、全国でも名の知れた沖縄の企業として、地域貢献の意識が強い会社だと感じていました。
長年プライベートカンパニーとして事業をしてきましたが、2019年3月にPEファンドの傘下に入り、上場を目指して独り立ちしていく方向性に変わったことで、競争力の強化を掲げるようになりました。そのため私が就任してからの1年半は、マーケティングはもちろん、営業やサプライチェーン、財務など、すべての部門の強化を図り、取り組んできました。
――具体的には、この1年半でどのようなことに取り組まれたのでしょうか。
まずは、基本的な部分を徹底することに取り組みました。たとえば、スーパーマーケットやコンビニエンスストアはじめ流通企業は、メーカーが前もって新しい施策や商品の案内を入れることで、その仕入れや展開などを判断します。その際、メーカー側は商談のタイミングにあわせて商品をつくったり、販促を企画できたりするかがポイントになってくるわけです。
しかし、当時のオリオンビールは、自社の論理やタイミングで進めている節があり、先方のタイミングを気にせず、突然、新製品を持って行ってしまうこともありました。商談のタイミングにしっかりと乗せている競合大手と比べれば、後手後手に回っていたのです。
そこで、やはり流通に合わせて我われの施策や商品を紹介できるよう、営業やマーケティング、R&D含めて、まずはしっかりとカレンダーをつくり、それに沿って動いていくという基本の足固めをしました。
また、これまでは商品を紹介するだけで終わってしまっていたところを、こういう風に展開すればお店の売上やビールカテゴリー全体の売上が伸びるというような、流通側のメリットまで考えて提案できるようにすることもできるようにしたいと取り組んでいるところです。
それから、新商品の発案も後追いの商品が多い状況でしたので、あらためて市場を見つめ直し、どこに機会があるのかを再定義するなど、商品開発の方法も変えています。
――沖縄に限らず、全国的に幅広く展開を予定されているのでしょうか。
オリオンビールは、沖縄県内での売上が圧倒的に大きいという特性があり、県外ではまだ本格的な展開が十分にされていません。沖縄県内だけであれば、メーカーとして大手のキリンさんやサントリーさんと同等以上のシェアを持っているものの、全国展開となって、それらの企業と同じように戦っていくだけの規模や体力は持ち合わせていません。そのため、まずは県内での競争力を高めることによって、県外で戦うための能力を養おうと考えました。それができたところで県外にも展開していく戦略を描いています。
また、今後は今まで強化してきた組織力をフルに活用して、県外にも積極的に打って出たいと考えています。そのためには、県外のニーズにあった、沖縄の魅力を生かした商品の開発も必要になってきます。
沖縄県内では人気ビールメーカーとして展開しつつも、県外ではニッチなポジションを確立していくという異なる2つのミッションをどう展開していくかは、現在の最大の課題です。おそらく、今後は今まで以上に県外への注力が増えてくると思います。