RYUKYU note #09 前編

プレミアムクラフトビールが好調。オリオンビール CMOが描く、沖縄発のブランド戦略

 

「75BEER」でプレミアムビールの市場を開拓


――商品開発の面では、プレミアムクラフトビールの「75BEER」を積極的に展開されています。背景には、どのような意図があるのでしょうか。

 「75BEER」は、オリオンビールにプレミアムな価格帯の商品がなかったことから企画した、当社初のプレミアムクラフトビールです。
 
「75BEER」

 市場全体を見ると近年はビールの低価格化が進んでいますが、利益を上げていくためには、プレミアムレンジを攻めていかなければなりません。ただ、プレミアムビールはすでに他社も展開しているので、その真似をするのではなく、新しい価値をつくろうと、近年ブームとなっているクラフトビールに目をつけました。

 「75BEER」は、実は発売から1年ほど前に、オリオンビールの工場があり“ビールの街”としても知られる名護市限定で発売していました。そのときは地域おこしを目的に小さなスケールで展開していたので、これを改良し、最終的には全国でも戦える商品をつくろうということで開発を進めました。

 発案時には、東京と違ってクラフトビールにまだ慣れていない沖縄で、はたして浸透するのかという声もありましたが、まだ市場ができていないからこそ我われが先行して提案していくべきだろうとの思いで展開し始めました。



――市場は順調に拡大していますか。

 はい。面白いのが、やはりプレミアムビール市場全体の底上げにつながっているということなんです。というのも、発売前は「ザ・プレミアム・モルツ」や「YEBISU」などプレミアムビールを愛飲している顧客が「75BEER」に移行するのではないかと考えていましたが、実際はそれらのブランドと市場を食い合うのではなく、「一番搾り」や「スーパードライ」など、いわゆるメインストリームのブランドから移行しているのが分かっています。そのため、プレミアムビール市場は「75BEER」の売上が、そのまま乗る形で1.5倍程度に拡大しているんです。

 今までメインストリームのビールを飲んでいた方が、毎回というわけではないにしろ、たとえば週末だけといったように、定期的に「75BEER」を飲んでくれていると分析しています。おそらく、クラフトビールというものが、いわゆるプレミアムビールとは異なるセグメントだと認識され、馴染み深いオリオンビールから発売されたなら飲んでみようということで、商品を手に取るハードルが下がっているのではないかと思います。

――あらかじめ想像していたよりも、沖縄の方はクラフトビールへの関心が高かったということでしょうか。

 そうですね。クラフトビールは良いものだというイメージに加えて、地ビールみたいに地域性を強く反映した商品だと思いますので、消費者もそういう認識で地元性を評価しているのだと思います。加えて、オリオンビールの調査では、以前からドラフトよりももっと良いものを求めるニーズがあることが分かっていました。なので、その両方の要素が合わさって高い関心を持ってもらえたのではないでしょうか。

※後編「オリオンビール CMO吹田龍平太氏が語る、マーケティングで大切なこと」に続く
他の連載記事:
RYUKYU note の記事一覧
  • 前のページ
  • 1
  • 2

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録