RYUKYU note #09後編

オリオンビール CMO吹田龍平太氏が語る、マーケティングで大切なこと

 

沖縄特有のメリットもあれば、デメリットもある


――吹田さんは豊富なマーケティング経験をお持ちですが、マーケティングを行う際に大切だと考えていることはありますか。

 消費者のことを考えて、消費者が欲しいと思うものをつくる、もしくは消費者が共感するようなコミュニケーションを行うことがマーケティングだと思っています。そこで、常に消費者ニーズを理解できるように意識しています。

 消費者を理解するきっかけはいろいろあると思っていて、たとえば量的な調査を参考にすることもあれば、社会のトレンドからカテゴリーの先を読んで、それに合ったものをつくっていこうと考えることもあります。また、ほかのマーケットで売れているものからアイデアを得ることもあります。



――マーケターとして、ご自身の強みは何だと思われますか。

 好奇心があって、いろいろなことに挑戦してみたいと思うことでしょうか。あとは、ビジネスのことまで考えられることが強みです。マーケターの中には、広告コミュニケーションを考えることが好きという人がいますが、私はビジネスとしてマーケティングを捉え、PL管理をしながら売上や利益をどう立てるかを考えることが好きです。

――これまで各社で得た経験の中で、特に生きている経験は何ですか。

 カテゴリーが近ければマーケティングの手法も近いということがあるので、洋酒メーカーのMHDモエ・ヘネシー・ディアジオでの経験でしょうか。料飲店がある市場でのマーケティングは独特ですが、そういったところも含めて経験したので、それが役に立っていると思います。

――マーケティング本部がご自身の就任のタイミングで立ち上がったかと思いますが、チーム内のコミュニケーションで心がけていることはありますか。

 部内にマーケティングの経験者が少ないので、分かりやすく伝えることですね。雑談からアイデアが生まれてくることもありますし、意見交換することでクオリティが上がってくると考えています。なので、やはりコミュニケーションが大事です。その点、小さな会社ですので、なんでも話せる状況はつくれていると思います。

 ある程度マーケティングを分かっている人間が頭の中でいろいろ考えても、それを実行するのはチームのメンバーなので、噛み砕いて説明したり、優先順位をつけて進めたりしています。なかには、想定していたよりもうまくいかなかくて、最初からやり直すということもあります。そういう意味では、トライアンドエラーですね。


 

沖縄企業であることの強みと弱み


――実際に沖縄でマーケティングを遂行する中で、どのような点に東京との違いを感じますか。

 沖縄は島として独立した場所にあり、歴史も文化も本州とは違う面を持っています。そのためか、沖縄の人は、できれば島の中だけで生活を完結させたいと思っていると感じています。それが地元へのリスペクトや独自の嗜好にもつながっていて、そうした思いをきちんと商品に反映することで地元の人にアピールできますし、商品を県外に持っていく場合のユニークさにもなっています。

 ただ逆に言えば、本州から離れた島であるがゆえに、全国展開する場合に効率が良くないという課題もあります。ビールの市場でみると、沖縄の市場は全国の2%にも満たない小ささです。にもかかわらず、商品や広告をつくろうとすれば、全国展開する場合とほぼ変わらない労力やコストがかかります。なので、やはり全国に展開していきたいという思いはありますが、その一方で持っていくだけでも輸送費がかかるという、沖縄ならではのハードルがあることを感じます。



――最後に、沖縄の若手経営者やマーケターにアドバイスをお願いします。

 沖縄県内を見ることも大切ですが、それだけで完結せず、沖縄の良いところをもっと外に発信していってほしいと思います。その活動を通して、全国シェアが1数%でもとれれば上がれば、県内の全マーケットに匹敵するほどの大きなインパクトが生まれます。それと同時に、県外からいろいろなものを得ることで、沖縄自体も良くなっていくのではないでしょうか。
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