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よなよな流「ファンベース・ブランディング」―ファンの熱狂をブランドの力に変える方法 #05

起源に立ち返るべきか、忘却すべきか。よなよなエール流 ブランド論【ヤッホーブルーイング 稲垣聡】

前回の記事:
ファン度を高める、よなよなエール流「密着プレー」とは【ヤッホーブルーイング 稲垣聡】

忘れ去られるブランドの“起源”

 P&Gで長年にわたってブランド・コンサルタントを務められ、現在はブランド・コンサルティング会社を率いる岡本晋介氏が、かつて話してくれたブランドにまつわるエピソードをひとつ紹介しましょう。

 「フランスの有名な『エルメス』は、もともと貴族のアウトドア(=乗馬)ブランド。だから有名なスカーフは、地面に敷くためのものだった」というもの。
 
©123RF
 たしかにエルメスは、馬具製造がルーツで現在も馬具をつくり続けていますし、ロゴにも馬車が描かれています。1930年代に誕生したエルメスのスカーフの用途が、この話の通りだったのかはわかりませんが、自動車の普及を見越して、アウトドアである乗馬用品から皮革製品の製造にシフトしたのは事実です。

 しかし、今の日本で、「エルメスのイメージは?」と聞かれて、「馬具」「鞍」と言う人は、ほとんどいないでしょう。多くの人は、「バーキン」や「スカーフ」のイメージを語るのではないでしょうか。

 このエルメスの例のように、ブランドとは、誕生からしばらく経つと、さまざまな要因によってルーツは忘れ去られ、顧客のマインド内には新たなイメージが上書きされていきます。ブランド研究で著名な中央大学の田中洋教授は、この事象を「起源の忘却」と定義して、ブランドが自律的存在として社会に知覚されるためには必要なことであるとしました。
 

時代の変化の中で、ブランドに関わる人がいかに足並みを揃えるか

 「起源の忘却」を、実際的なブランド開発や、ブランド・マネジメントの観点から捉え直せば、開発の時に「こういう存在になってほしい」「こういうイメージで広めたい」と設計したブランドのイメージが、ある程度の期間の顧客の使用経験を通じて、思わぬ方向に変化したり、新たな要素が付加されたりすることがあるということに他なりません。

 例えば、「よなよなエール」はたかだか21年目のブランドですが、それでも、私たちが最初に設計した「よなよなエール」ブランドと、現在のファンの心の中にある「よなよなエール」ブランドは、それなりに違うものになっているのではないかと考えています。かといって、それを問題視して、ルーツに立ち返ったブランディングをする必要があるというわけではありません。



 より問題になるのは、「起源の忘却」が起こり、ブランドが変化した場合に、ブランディングに関わる社内の関係者・部署が、どのように同じ方向を向き、足並みを揃えることができるかということです。

 悪い例では、ある担当者は当初に決めたイメージを守ろうとし、別の担当者は顧客の持つイメージに合わせようとする。これでは、ブランドの一貫性が保てなくなってしまいます。その場合に行うべきなのは、ファンの持つブランドイメージを詳しく知り、ファンの持つイメージから、ブランドの一貫性を見出すというのもひとつの方法だと思います。
 

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