RYUKYU note #10前編

コロナ禍でも着々と出店計画を進める、沖縄人気店「ステーキハウス88」が描く拡大戦略

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 沖縄県は土地柄や歴史的背景に本土と大きな違いがあることから、ビジネスの進め方も従来の方法では、うまくいかないケースがあります。連載「RYUKYU note」では沖縄で活躍する経営者やマーケターをバトンリレー形式でインタビューし、そのサクセスストーリーの裏側にある秘話や、沖縄ならではの戦略や課題、未来に繋がるストーリーをひも解いていきます。

第10回は、ステーキをメインメニューとする飲食店「ステーキハウス88」などを沖縄県内で運営する、沖縄テクノクリエイト 常務の金城康樹氏が登場。ステーキハウス88は1978年に1号店をオープンし、2013年頃から店舗数を拡大。2016年には1000円でステーキが食べられる「ステーキハウス88Jr.」など新業態もスタートしました。

飲んだ後の締めにステーキを食べるなど、独自のステーキ文化が根付く沖縄で、競合もひしめく中どのような戦略を実行してきたのか。また、コロナ禍でどのような未来を描いたのか、お話を聞きました。
 

外国人向けキャバレーから、ステーキハウスへ

――「ステーキハウス88」の本店は1978年に那覇市の辻というエリアにオープンしましたが、どのような背景があったのでしょうか。

 1972年に沖縄が日本に復帰するより前、辻の周辺には多くの米軍の人が行き交い、軍向けのキャバレーなどが軒を連ねていました。その中で、当社はもともと「Club88」という外国人向けのキャバレーを営んでいたんです。

 ただ、沖縄の日本復帰にあたって外国人がどんどん減っていき、日本人向けに業態を変更しなければならなくなりました。その際、辻には「ジャッキーステーキハウス」さんがお店を構えていたこともあって、私の父である現オーナーがステーキハウスをやりたいと考え、「Club88」から名前を取って「ステーキハウス88」をオープンさせました。

 今でこそ、辻には当店とジョージレストランさんの2店舗しかステーキ店がありませんが、25年ほど前には5~6店舗が集まり、ステーキの街として知られていたんですよ。ただ、ビルの家主さんにアパートを建てたいからと立ち退きを要求されたりして、他店は少しずつ移転していきました。当社が残ったのは、土地から建物までを自社で持っていたためです。
 

ターゲットを観光客に移し、売上と店舗数を拡大 

沖縄テクノクリエイト 常務の金城康樹氏

――創業からの歴史を辿ると、2013年を境にステーキハウス88の店舗数を急激に拡大されている印象です。それまでは、ステーキという軸で別ブランドを展開されたりしてはいるものの、店舗数はあまり多くなかったイメージなのですが、何か理由があったのでしょうか。

 今でこそ若い社員も多く働いていますが、ステーキハウス88は老舗のレストランなので昔は年配の従業員が多く、積極的に店舗展開していこうという意欲がありませんでした。しかし、私は大学進学で東京に行き、飲食店でアルバイトをしたことをきっかけに、やるからには業績を伸ばしたいと考えました。当時、2003年に出店した2号店である国際通り店の調子が良かったことや、映画や朝ドラなどの影響で全国的に沖縄ブームが起きていたことから、沖縄のステーキは観光客に需要があるのではないかと思い、国際通りの松尾や美ら海水族館の近くなど、観光客が多く訪れる場所に店舗を拡大していったんです。

――ターゲットを地元の方から観光客に移したのですね。

 はい。実は、私が大学を卒業して沖縄に帰ってきたときに、リーマンショックの影響で会社が少し厳しい状態に追い込まれていました。それで本店よりも売上が高かった国際通り店にもっと力を入れていかなければならないと思い、4~5年の間、私自身も現場に入って朝から晩までチラシ配りや呼び込みをしました。その経験を通してステーキハウス88の強みを肌で感じられたことが、のちに店舗展開や経営を行ううえでいい方向に作用したのかなと思っています。

 なぜそこまでしたかというと、私は「ステーキハウス」に学校に通わせてもらい、育てられたようなものなので、絶対に守らなければいけないと思ったんです。おそらくリーマンショックがなければ、普通にぬくぬくとしていたのではないかと思います。泳げない人がプールに無理やり落とされて、何かしないと死んじゃうから泳げるようになったんでしょうね(笑)。

 ただそのかいあって、売上は5年間ずっと前年比120%を達成するなど、一気に成長しました。現在の売上規模は20億円程度。私が沖縄に帰ってきた2009年頃と比べると、5倍くらいに伸長していると思います。

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