音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #26
本当に機能する「共通言語」とは何か? 組織で構築する際のポイント【音部で壁打ち】
アクティブ・ラーニングの場合
2020年の新聞に、国立情報学研究所の新井紀子先生が小学生のアクティブ・ラーニングを例に言語教育の重要性について説明している記事がありました。
理科の授業でスチール缶やアルミ缶を使って、どんなものが磁石につくか実験したとします。ある班がスチール缶本体にはつくが、プルトップだけはつかないことを発見しました。でも、発見したことを言語化できません。記述するのは面倒で、語彙も十分ではない。この状態では、知識として他の班と共有できません。話し合っても、なかなか知識の共有にはいたらない。語彙の量、書く速さ、ノートの取り方といった基礎基本がクラスの中である程度そろっていないと、アクティブ・ラーニングを有効に行うのは難しい、という内容でした。
語彙量や意味の精度、記述の速度や概念の整理の仕方なども共通言語の要素だと理解できます。実は、この問題は小学生のアクティブ・ラーニングに限りません。大企業のブランドマネジメント組織が似たような状況に置かれていることがあります。
Aブランドの化粧水の経験を、Bブランドのシャンプーに有効に活かすためには、語彙の共有だけでなくブランドマネジメントの考え方や手法、オペレーションに使う文書のフォーマットなどが統一されている必要があります。
共通言語のつくり方
上述のように、共通言語を確立するもっとも重要な目的のひとつは、組織や個人が持続的・有機的に成長するために必要な経験値の共有です。つまり共通言語をもつことで、個々の経験値が効率よく収集され、蓄積され、組織内に流通される仕組みができあがればいいのです。このように理解することは、いい共通言語をつくるヒントになりそうです。
たとえば、語彙や概念を解釈の余地なく定義したり、新商品導入プロセスや「パーセプションフロー®・モデル」などのオペレーションの枠組みを確立したり、定期的なラーニング共有を仕組み化したりすることで、共通言語の確立を促すことができそうです。