音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #番外編「読書企画1」
アフォーダンスを知れば、ブランド間の競争で優位に?【音部で壁打ち】
学習意欲が高まる春、マーケティングに役立つ本を探している人も多いでしょう。今回は、音部で「壁打ち」の番外編として、音部さんに「新米・中堅マーケター」にオススメの書籍を聞きました。まずは「新米マーケターにオススメの1冊」を紹介します。
パーセプションフローで知覚刺激を扱う時に役立つ
【質問】
新米マーケターが読むべき1冊を教えてください?
本書は、1995年に出版された書籍『アフォーダンス-新しい認知の理論』のの新版(2005年)です。この領域の入門書として好適です。
「知覚と刺激」について研究していた駆け出しの頃に、タイトルにある「アフォーダンス」という考え方を知りました。そもそも認知科学や認知心理学の概念ですが、マーケティング界隈にもたまに詳しそうな方がいるゲシュタルト心理学とも関係が深いようです。
近年、存在感が増している行動経済学にも通じるところがあり、デザインや設計などにも頻繁に利用されています。浅薄な理解しか持ち合わせない私には、正確にはどの領域に属するものか判然としませんが、”そのあたり”の分野の考え方です。
アフォーダンスの正確な体系化は専門家にお任せしつつも、マーケティング活動の設計を考える際には知っておくと便利です。とくにパーセプションフロー・モデル上で知覚刺激を扱うときには、大事な概念のひとつだと思います。競合相手のブランドマネジャーが知らなければ、競争優位の一部となりえます。逆であれば、ちょっと不利になるかもしれません。
原語ではaffordanceと書きますが、自然に発生した言葉ではありません。「~ができる、~を与える」といった意味をもつaffordという動詞をもとに研究者がつくった造語です。
雨に濡れた傘を玄関に持ちこんだとき、傘の先っぽ(石突)を床のタイルの目地に当てて、壁に立てかけることがあります。これはタイルの目地が「石突を置くようaffordしている」からです。ドアの取手に引っ掛けたり、下駄箱の縁にぶら下げたり、傘を置く方法がほかにもある中で、タイルの目地へ立てかけるという行動を促しています。
広告などの直接的なコミュニケーションではない知覚刺激、たとえば製品設計や店頭施策、Webサイト・デザインといった領域で威力を実感してみてください。
※連載音部で「壁打ち」の質問も募集中!音部大輔さんが皆さまからの質問に答えてくれます。 こちらでお待ちしています。