マーケターズロード 鹿毛康司 #07

鹿毛康司―ひとりの人間として、お客さまと向き合う「ファンと呼ばない」ファンベースドマーケティング

前回の記事:
「ここに鹿毛康司あり」 快進撃のエステー広告はコンテンツマーケティングだった
 2020年にエステーから独立し、かげこうじ事務所を立ち上げた鹿毛康司氏。昨年、今まで語られてこなかったマーケティング思考を初めてアジェンダノートで6回に渡って公開してもらった(マーケターズロード 鹿毛康司 )。そして、その記事は多くのマーケターの注目を浴びた。独立して1年経った今、第2弾として、さらに突っ込んで鹿毛氏の思考に迫った。
 

縦のコミュニュケーションはすでに終わってしまった。


鹿毛康司(かげ・こうじ)
かげこうじ事務所代表/マーケター/クリエイティブディレクター
「お客様の心に向き合う」をテーマにマーケターとして活動中。同時にクリエイティブディレクターとしてCM監督、プランニング、コピー、作詞作曲を手掛ける。 雪印乳業を経て、2003年にエステー入社。同社を日本有数のコミュニケーション力のある企業に導く。同社執行役を経て、2020年に独立、かげこうじ事務所を設立。代表作は消臭力CM。11年震災直後の「ミゲルと西川貴教の消臭力CM」で一大社会現象を起こす。早稲田大学商学部卒、ドレクセル大学MBA。 現在、グロービス経営大学院 教授、エステー コミュニケーションアドバイザー、日経クロストレンド アドバイザリーボードメンバー/Ad-tech 東京ボードメンバー。受賞歴:マーケターオブザイヤー、WEB人貢献賞、ACCゴールド、フジサンケイ広告大賞ほか。著書:『「心」が分かればモノは売れる』(日経BP)『愛されるアイデアのつくり方』(WAVE出版)ほか

 伝統的なマスコミの報道には世論をつくる力があります。しかし、企業が一方的な情報を出して、それをマス広告で世の中に届ければ上手くいく時代は終わりました。

 今までは広報という部署がどのように情報を打ち出せば良いか、社内で一生懸命に考えてきました。「これを言うべきだ、言うべきでない」と外部に出す情報を取捨選択したり、「もっとこういう表現で」と伝わり方にもこだわったり。ただ、そうやって情報発信していた時代はもう終わりました。

 だって世の中の普通に生活しているお客さまの声がどんどん横につながって、みんなは当たり前のように、それを支持しているんですよね。これは大きな変化です。

 わかりやすい例で言うと、旅行先やお店選びをするときです。今や10代20代のデジタルに慣れた人たちは、Instagramで検索して判断しています。企業がマスコミの人たちと友好関係をつくってきたように、お客さまともそうした関係をつくりあげる必要が出てきわけですよね。お客さまと絆をつくることがとても大切な時代になり、企業からの一方的な縦のコミュニケーションは終わったわけです。

 で、今だから言うんですけど、そもそも私のマーケティングのテーマは「お客さまに心で向き合う」だったので、知らず知らずのうちに絆づくりをやっていました。ソーシャルのない2004年ごろはブログに書いてあるエステーCMのことに自社サイトで回答する。それを、そのブログを書いている人が見て、また書いてくれるという活動をしていました。Twitterが登場してすぐに個人アカウントを立ち上げて、そこから西川貴教さんと出会ったり、震災後の消臭力のCMが社会現象になったりしたのも、みんなの応援のおかげです。

 私のTwitterフォロワー数は1万5000人ほどですが、いわゆるエンゲージメントがとても強い人たちがいてくれます。そこから生まれたことを前回お話します。(参考:#6「ここに鹿毛康司あり」 快進撃のエステー広告はコンテンツマーケティングだった

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