マーケターズロード 鹿毛康司 #08

鹿毛康司氏が明かす、マーケティングで陥りがちな2つの罠

 

95%の無意識が消費行動に影響している


 人は不思議な消費行動をしています。本人も説明できない行動をとっています。論理的に行動していると思っている人でさえも95%の無意識が支配しています。

 厄介な話ですが、あくまで本人も気がついている「感情」や「意識」はマーケティング手法で見えるのですが、心は見えません。

 「本人も気がついていない人を動かす心」はインサイトと呼ばれています。今、このインサイトを見つけることがマーケティングの世界では流行していますが、そもそも人が心理で動いているということは大昔からあったことです。ただ、誰もが簡単にインサイトを導き出せるような手法が世の中にないだけだと思うのです。

 私は、このインサイトを見つける筋肉を少しだけ身につけました。長年マーケティングの仕事をしてきたと同時に、クリエイターとしても仕事をしてきたことが影響しているのではないかと思っています。

 CMの絵コンテを描いたり、コピーを書いたり、曲をつくったり、映像編集もしてきました。ちなみにマーケターとクリエイターを同時にやるという経歴はあまりないと思うのですが、これは必要に迫られてのことでした。

 クリエイティブは「心に訴える何か」をつくり出すことです。必然的に心を探る必要があったのです。おそらくマーケターの時に使う脳ではない筋肉を使っていたのでしょう。

 外から見ると「ひらめき」だったり「勘」や「センス」という言葉で理解されると思いますが、振り返ると、あるプロセスをとっていることに気がつきました。


 

自分の心を使ってインサイトを見つける


 それは「自分の心」を使って「人の心」を探るというプロセスです。それをマーケティングと融合させたときに、成果が生まれました。論理だけで物事を進めた時はうまくいかなかったように思います。

 「自分の心」を使うといっても、自分の好き嫌いを通すということでも、精神論でもないんです。自分の心の中には人間誰しも持っている「人としての心」があって、その心と相談すると他の人にも共鳴できる周波数が見つかることがあります。

 その「自分の心」とは、決して特殊なものではありません。私はとても弱い人間です。同期が出世したり、お金持ちの人を見たりしたら、ジェラシーを感じます。高校時代は特に勉強についていけず2浪もしました。その時の自分の心はコンプレックスでいっぱいでした。今もコンプレックスだらけです。

 母を亡くしました。悲しい心は幼児のように弱く情けないものです。ひとりで独立心があるわけでなく、弱音も吐くし愚痴も出ます。でも、考えてみたら、そんな弱い自分だから、もっと言えば、きっと普通の人間だから「自分の心」を使って「お客さまの心」を見つけることができたのではないだろうかと思っています。

 だから、勘だとかセンスだとかと片付けずに、少しトレーニングすれば、普通の心を持った人こそがマーケティング手法では見つけられないインサイトを見つけることができると今では確信しています。

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