本田哲也、藤原義昭 特別対談

本田哲也、藤原義昭 特別対談「共創構造がつくる企業と顧客の未来」

 

企業がナラティブカンパニーを目指すには

――藤原さんはアパレル業界に移られましたが、本田さんの本を読んで自社で取り組んでみようと思ったことはありますか?

藤原 ユナイテッドアローズは、社員全員が常に「理念」に立ち返る会社なんです。そして、その理念とは、「真心と美意識をこめてお客様の明日を創り、生活文化のスタンダードを創造し続ける」です。

すべてはお客様のためにであって、そのために何をやらなければいけないのかを5つの価値創造で表現しています。その5つとは「お客様」、「従業員」、「取引先」、「社会」、「株主」に向けた価値です。

本田 まさにステークホルダーそのものですね。



藤原 この5つの価値をつくることによって、日本のスタンダードをつくるんです。この理念はすごく良いな、と私も気に入っています。

我われは服をつくってお客さまに購入していただきますが、どうしても日本企業はプロダクトアウト的な考えが多くて、「お客さま自身で感じてください」と突き放したスタンスが多いと思います。

しかし今は、お客さまとダイレクトにつながれる時代になり、企業は急激にコミュニケーションの変革に迫られています。お客さまの方が時代の変化への適応が早いので、まだ追いついていません。

だからこそ、ナラティブのような考え方を持って、実践することがすごく重要だと思うんです。Howだけを考えて、こういうコピーをお客さまに何回届けたらいいという話ではないのです。

本田 確かにそうですね。「この広告がナラティブっぽいですか?」と聞かれたら、アドバイスぐらいはしますが、そもそもその考え方が違っていますよね。

藤原 もっと高次元に考えて一生懸命に絞り出して、お客様とコミュニケーションすることがすごく重要になっています。昔よりマーケティングの難易度は高くなっているんです。

それを自覚して、マーケティング担当者はフレームワークばかり勉強するのではなく、自社ブランドの歴史やその周辺領域も含めて勉強していく必要があると思います。

それを会社の代弁者としてどう伝えて、お客さまとつながらなければいけないかを考えるんです。我われで言えば、服をつくる人も、店頭で接客する人も、それぞれの役割のなかで最高に輝けるブランドづくりができるはずです。だからこそ、マーケティングは「How」ではなく、「Why」に頭を切り替えるべきだと思います。

本田 そういう意味では今回、この本を一番読んで欲しいのは実は経営者でもあります。タイトルに「カンパニー」と入れた狙いもそこにあります。

もちろん、マーケターにも大いに関係のある話です。ナラティブは、どのポジションの人にとっても、とても重要な概念になっていると思います。

(後編に続く)
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